CM2S書評
2025

#例によって、出てくるものはまるで無秩序です。
#書評とは言っても多分古いものばかりです。
#基本的に「読んだら書く」なので、定期的に量が増えるとは限りません。たまったら新しいページになります。
#しないつもりでしたが、一応大雑把な評価をしておきます。

書評1
『野間宏集』/シェストフ『哲学千一夜』/フォークナー『響きと怒り』/田辺洋二『英会話の常識非常識』/トミー植松『日本人の不思議な英語』/小池荘彦『心霊写真』/八杉佳穂『マヤ文字を解く』/大江健三郎全作品1/中村保男『名訳と誤訳』/副島隆彦『英文法の謎を解く』
書評2
ミスター高橋『流血の魔術 最高の演技』/永井均『ルサンチマンの哲学』/田中喜美子『書きたい女たちへ』+千本健一郎『「いい文章」の書き方』+大隈秀夫『(実例集)うまい文章が書ける本』/笠谷和比古『徳川吉宗』/中島梓『ベストセラーの構造』/荷宮和子『若者はなぜ怒らなくなったのか』/寺坂英孝『非ユークリッド幾何の世界』/奥成達『学校では教えられない日本史読本』/斉藤茂太『初対面で相手の心をつかむ法』/斉藤美奈子『読者は踊る』
書評3
佐高信・テリー伊藤他『お笑い創価学会;信じるものは救われない』/高橋源一郎『文学がこんなにわかっていいかしら』/「学会マネー」研究会『創価学会財務部の内幕』/亀井勝一郎『青春について』/福田和也『作家の値うち』&安原顕『読書狂いもほどほどに』/宮崎市定『科挙』/大宮信光『科学の珍説・奇説おもしろ雑学』/勢古浩爾『まれに見るバカ』/別宮貞徳『翻訳と批評』/ヘンリー・スコット=ストークス『三島由紀夫 死と真実』
書評4
平勢隆郎『中国古代の予言書』/山本信幸『「キャバクラ」の言語学』/池田荘子『セックスレスな男達』/加賀乙彦『死刑囚の記録』/安原顕『やっぱり本は面白い』/小谷野敦『バカのための読書術』/柳原三佳『「交通事故」のウソ』/河合隼雄『コンプレックス』/鎌田慧『弘前大学教授婦人殺人事件』
書評5
呉智英『知の収穫』/加藤隆『『新約聖書』の誕生』/宮田律『現代イスラムの潮流』/石田保昭『ムガル帝国とアクバル大帝』/呉智英『言葉につける薬』/吉川忠夫『王羲之:六朝貴族の世界』/日下公人『「逆」読書法』/籾山明『漢帝国と辺境社会』/村瀬興雄『アドルフ・ヒトラー』/野田正彰『コンピュータ新人類の研究』
書評6
伊東光晴『ケインズ』/別宮貞徳『特選 誤訳 迷訳 欠陥翻訳』/小林よしのり他『自虐でやんす』/松下竜一『怒りていう、逃亡には非ず』/松下竜一『ルイズ:父に貰いし名は』/呉智英『ロゴスの名はロゴス』/山田忠彰『ヘーゲル論;理性と他性』/尼川洋子(編)『女の本がいっぱい』/日商岩井広報室《トレードピア編集部》(編)『英語は度胸』/金田一春彦『日本語』
書評7
小杉泰『イスラームとは何か』/中島梓『コミュニケーション不全症候群』/ロム・インターナショナル『世界の紛争地図の読み方』/長部三郎『伝わる英語表現法』/吉永良正『まだわからないことがある』/佐々木知子『少年法は誰の味方か』/小和田哲男『明智光秀』/遠山美都男『天智天皇』/小和田哲男『徳川秀忠』/千葉憲昭『オーディオ常識のウソ・マコト』
書評8
高橋和夫『スウェーデンボルグの思想』/柳瀬善男『大学病院の掟』/酒井邦秀『どうして英語が使えない?』/Jディミトリアス『この人はなぜ自分の話ばかりするのか』/辻達也『江戸時代を考える』/樺島忠夫『文章構成法』/田地野彰『「創る英語」を楽しむ』/安藤健二『封印作品の謎』/小林薫『英語通訳の勘どころ』/朧谷寿『藤原氏千年』
書評9
小沼純一『サウンド・エシックス』/平井正『ゲッベルス』/潮匡人『田中知事の「真実」』/武田邦彦『リサイクル幻想』/碓井真史『なぜ「少年」は犯罪に走ったのか』/中島文雄『日本語の構造』/尾形尊信『英語の誤訳』/岩永文夫『フーゾクの経済学』/武田京子『わが子をいじめてしまう母親たち』/『新恋愛小説読本』
書評10
桑原武夫『文学入門』/司馬理英子『のび太・ジャイアン症候群』/風間喜代三『言語学の誕生』

書評2006その1
ウィルソン=ブライアン=キイ『メディア・セックス』/大泉実成『説得―エホバの証人と輸血拒否事件』/下薫『子供を英語の達人に!!』/由水常雄『正倉院の謎』/清水一夫『UFOの嘘』/別冊宝島Real 027『立花隆「嘘八百」の研究』/古畑種基『法医学ノート』/広中克彦『お役人さま!』/上野正彦『死体は語る』/桜井弘(編)『元素111の新知識』
書評2006その2
三森ゆりか『外国語を身につけるための日本語レッスン』/藤原智美『なぜ、その子供は腕のない絵を描いたか』/杉本大一郎『エントロピー入門』/大島正二『漢字と中国人』/遠藤紹徳『間違いだらけの中国語学習』/鈴木義里『日本語のできない日本人』/森昭雄『ゲーム脳の恐怖』/ロバート=K=レスラー他『快楽殺人の心理』/永沢光雄『AV女優』/寺沢芳男『英語オンチが国を亡ぼす』
書評2006その3
小笠原喜康『議論のウソ』/松田卓也・木下篤哉『相対論の正しい間違え方』/丸山健二『まだ見ぬ書き手へ』/志賀浩二『微分・積分30講』/GGジョーゼフ『非ヨーロッパ起原の数学』/岡部・戸瀬・西村(編)『分数ができない大学生』/西村和雄『学力低下が国を滅ぼす』/竹内淳『高校数学でわかるシュレディンガー方程式』/バクシーシ山下『セックス障害者たち』/西村和雄(編)『ゆとりを奪った「ゆとり教育」』

書評2007その1
張明澄『間違いだらけの漢文』/西成活裕『渋滞学』/岡田尊司『脳内汚染からの脱出』/工藤隆一『力士はなぜ四股を踏むのか?』/谷田和一郎『立花隆先生、かなりヘンですよ』/小栗左多里『英語ができない私をせめないで!』/小栗左多里+トニー=ラズロ『ダーリンの頭ン中』/佐々淳行『謎の独裁者・金正日』/Sウェッブ『広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由』/西野友年『ゼロから学ぶエントロピー』

書評2012その1
桑田昭三『偏差値の秘密』/谷崎潤一郎『陰翳礼讃』/長谷川滋利『メジャーリーグで覚えた僕の英語勉強法』/立花隆『日本共産党の研究』/松島栄一『忠臣蔵』/吉川幸次郎『漢の武帝』/大川貴史『高校化学とっておき勉強法』/保江邦夫(監)『早分かり物理50の公式』/永沢光雄『AV女優2』/奥野正寛『ミクロ経済学入門』

書評2013その1
竹内淳『高校数学で分る線形代数』/スペンス『議論に絶対負けない法』/開高健『ベトナム戦記』/保坂展人『いじめの光景』/奥野修司『ねじれた絆』/秋月龍a『「正法眼蔵」を読む』/中津燎子『なんで英語やるの?』/グループ1984年『日本の自殺』/平川南『よみがえる古代文書』/大野晋『日本語について』
書評2013その2
岩田規久男+サトウサンペイ『嘘ばっかりの「経済常識」』/茂木弘道『文科省が英語を壊す』/高砂浦五郎『親方はつらいよ』&古内義明『イチローVS松井秀喜』/小方厚『音律と音階の科学』/増田俊也『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』/近江誠『間違いだらけの英語学習 常識38のウソとマコト』/ヒヤ小林『一ノ矢 土俵に賭けた人生』/山根英司『高校生のための逆引き微分積分』

書評2014その1
ウォルフレン『人間を幸福にしない日本というシステム』/宮川俊彦『心が壊れる子どもたち』/大原健士郎『「不安と憂うつ」の精神病理』/ウィルソン+シーマン『連続殺人の心理』/大越愛子『フェミニズム入門』/河原敏明『天皇裕仁の昭和史』/薬師院仁志『英語を学べばバカになる』/清水真木『友情を疑う』/キム・ジョンキュー『英語を制する「ライティング」』/ダウリング『シンデレラ・コンプレックス』+フェズラー&フィールド『グッドガール・コンプレックス』
書評2014その2
並木伸一郎『第6の密約』/フロム『愛するということ』/石井啓一郎『マルチリンガルの外国語学習法』/千野栄一『外国語上達法』/ボーヴォワール『人間について』/いかりや長介『だめだこりゃ』

書評2015
外山軍治「則天武后」/黒沼克史『援助交際』/李志綏『毛沢東の私生活』/ヒュー=ミラー『殺人データ・ファイル』/円地文子『源氏物語私見』+瀬戸内寂聴『わたしの源氏物語』

書評2016その1
永山則夫「無知の涙」/サンデル『これからの「正義」の話をしよう』/ジョンストン『紫禁城の黄昏』/岡本太郎『今日の芸術』/杉山隆男『兵士に聞け』/佐木隆三『死刑囚 永山則夫』/「少年A」の父母『「少年A」この子を生んで……』/朝日新聞大阪社会部『暗い森 神戸連続児童殺傷事件』/寺尾善雄『宦官物語』/鵜飼秀徳『寺院消滅』
書評2016その2
菊池昌典他「中ソ対立」/宮川俊彦「自分を壊す子どもたち」/奥村宏「新版 法人資本主義の構造」/愛新覚羅溥儀「わが半生」/篠田達明「徳川将軍家十五代のカルテ」/ピーブルズ「人類はなぜUFOと遭遇するのか」

書評2017
鹿島敬「男と女 変わる力学」/ニーチェ「この人を見よ」/久徳重盛「母原病」/チョン・チャンヨン「英語は絶対、勉強するな!」

書評2021
松本聡香「私はなぜ麻原彰晃の娘に生まれてしまったのか」/吉行淳之介「恋愛論」/小笠原博毅・山本敦久(編)「反東京オリンピック宣言」/飯山陽「イスラム教の論理」/日本ペンクラブ編・俵万智選「くだものだもの」/寺山修司「書を捨てよ、町へ出よう」/町沢静夫「成熟できない若者たち」/兼松左知子「閉じられた履歴書−−新宿・性を売る女たちの30年」/宮崎謙一「絶対音感神話−科学で解き明かすほんとうの姿」/呉善花「「漢字廃止」で韓国に何が起こったか」

書評25
西寺郷太「マイケル・ジャクソン」/立花隆「田中角栄研究 全記録」/筒井康隆「みだれ撃ち涜書ノート」/藤原智美「暴走老人!」/上祐史浩・有田芳生「オウム事件17年目の告白」/早川紀代秀・川村邦光「私にとってオウムとは何だったのか」/中野孝次「実朝考 ホモ・レリギオーズスの文学」/柳谷晃「円周率πの世界」/永井忠孝「英語の害毒」/奥田祥子「男はつらいらしい」

書評26
小野寺拓也・田野大輔「検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?」/広瀬健一「悔悟 オウム真理教元信徒 広瀬健一の手記」/龍田恵子「日本のバラバラ殺人」/松里公孝「ウクライナ動乱」/正木伸城「宗教2世サバイバルガイド」/吉本隆明+坂本龍一「音楽機械論」/坂本龍一「音楽は自由にする」/吉村栄一「坂本龍一 音楽の歴史」/遠藤周作「恋愛とは何か」/水上勉「恋愛指南」

書評27
ミンコフスキ(ブレ(編))「マルク・ミンコフスキ ある指揮者の告解」/遠山啓「微分と積分」/正岡子規「病床六尺」/澤田典子「アレキサンドロス大王」/坂本拓弥「体育がきらい」/近田春夫「グループサウンズ」/野原一夫「太宰治 生涯と文学」/大隈三好「切腹の歴史【第三版】」/文芸春秋(編)「統一教会 何が問題なのか」/ジェイムズ(篇)「愛欲と殺人」

書評28
田中雄二「シンYMO」


このページのおしながき

バイヤール「読んでいない本について堂々と語る方法」/ 遠山啓「現代数学入門」



バイヤール(大浦康介訳)「読んでいない本について堂々と語る方法」(ちくま学芸文庫(2016(<2008)原著(2007)))

えー… 読みました。その上で書いてます…(なんだかなぁ…)

怠け者やインチキ学者が喜びそうなタイトルの書物であるが、これは「真面目な」読書論の書である

著者はまず我々の読書概念にゆさぶりをかける

もしかしたら読んだ本を一字一句全て覚えているというチブル星人のような人間も実在するのかもしれないが、「普通の」人間であれば読んだ本の一体どれだけを覚えているというのか、また、読まなくても間接的に得た情報がどうかすればその「直読」情報を上回ることすらあるのではないのか、等々…

その上で、さらに著者は読書に関する強迫観念から我々を解放すると称する

読書の本質がそうである以上、読んでない本について語ることは十分に可能であり、それどころか逆に、実際に読んでしまうことでかえって想像力に制限が加えられてしまうことすらあるのではないのか、云々…

そして、そこで登場する「遮蔽膜としての書物」「共有図書館」「内なる図書館」「ヴァーチャル図書館」等々なる画期的な概念…

著者の立論は華麗で魅力的であり、説得力があるようにも見える…

そして、著者は、読んでない本について大いに語ろうではないか!そして「創造性」を大いに発揮しよう!と呼びかける…

しかし、評者・私はそれでも著者に異を唱えたいし、おそらくこれからも「バカ」正直に読んだ本について語ろうとし続けるだろう(つまり、このサイトのこのコーナーが読んでもない本で埋め尽くされることはないだろう(確か最後まで読んでない本というのはいくつかあったと記憶しているが…))

それは、評者・私が不器用でそれしかできないということもさることながら、著者の主張も知的誠実さをないがしろにしてよいということ、つまり「読まなくても分かる」という類の妄言を垂れ流せということではないと思われるからである(この書は知的誠実さに関する議論とは何か違う領域のことを問題としている、そう評者・私は思う)

そしてそれは恐らくこの書を読んだ人間でなければ分からないと思われる…


面白い! そんな読み方が著者の意図に沿うのかどうかは分からないが、この書に対する態度で知的誠実さを計ることができるのではないかとも思われる(上の中)

一つ面白いことに気付いた… この本のカバーに「レポートや小論文も、もう怖くない」と書いてあるが、この書物はそういうこと、つまり読んでもない本についてレポートや小論文に書け、などということを推奨しているわけではないし、第一この書を読んだだけでそんな状態になれる人は既に著者の言う「教養」を身に付けた人でなければそうそうおらず、そもそも著者の言う「教養」はそう簡単に身に付くものでもなかろう。そして、繰り返すが、それはこの書を読まないと分からない、少なくとも実感は難しかろう… カバーのこのような文章や販促用の帯に明らかに当の書物を読んでない、少なくとも正しく理解していないことが書かれていることはどうやら珍しくないようだが、こういう内容の書物でこんなことが起こるとは何とも皮肉である…


遠山啓「現代数学入門」(ちくま学芸文庫(2012))

同じ著者による微積分の入門書が難しくも案外面白かったので、引き続きこんなものを読んでみた次第

タイトルは多少語弊があって、現代数学全般に亘る入門書というのではなく、著者が現代数学を代表する分野と考えている集合論に関する入門書となっている

著者による二つの独立した論考をまとめたもので、「前編」は数学史を現代数学の集合論に至るように辿ったもので、「後編」が現代数学における集合論の紹介となっている

前編は、今更こんなこと聞かなくても…という数学史講義がやや退屈だが(それでもこの著者ならではの視点が効いていて面白い)、現代集合論誕生の経緯を割と楽しく学べる

後編はいよいよ現代集合論概説となるのだが… やっぱり難しい… 「群」「体」「環」という数学概念は、言葉面だけから評者・私もいい加減な理解をしていたのだが…、やっと分かった(ような…やっぱり分からないような…) 著者は、それは具体的にどういうことなのか、ということを割と常時気にしてくれていてそういう点で「現実」との接点を確保しながら論じ進めてくれるので、そこで辛うじて分かった気にさせてもらえている気がしないでもない…

最後の「位相空間」とかまで行くとさすがにもう何が何だか分からないが… 「ミンコフスキー空間」が出てくるのは、丁度偶然直前に指揮者のマルク・ミンコフスキ氏(ヘルマン・ミンコフスキーのそう遠くない親戚にあたる)の自伝を読んだこともあって、妙な「縁」を感じてしまった…


難しい! けどド素人にもそこそこ楽しめると思われます(上の下)


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