こんな妙チキリンな書評ページを一体どのくらいの方が読んでいるものか知らないし今更そんなに知りたいとも思わないのだけれど…
この書評コーナーもこれで結構長くやってきた…
突然だけれども、思う所あって哲学書は別扱いにしてみようと思った…
というわけでのこのページであります…
御注意
思う所あって、この「哲学書」コーナーに限っては「評価」(「上」とか「下」とか、あるいは点数とか…)はしません
哲学書02
ハート「法の概念」/カント「実践理性批判」/サルトル(「世界の大思想」第18巻)/シュル「機械と哲学」/
ラズ「価値があるとはどのようなことか」/デネット「心はどこにあるのか」/リドレー「徳の起源」/バタイユ「内的体験」/有島武郎「惜しみなく愛は奪う」/カミュ+サルトル+ジャンソン「革命か反抗か」
このページのおしながき
山内志郎「中世哲学入門」/ カント「判断力批判」
とんでもない本である… およそ中世哲学入門になってないどころか、普遍論争入門ですらなく、「存在の一性」入門としても怪しい…と著者自身が開き直ってしまっている… これは…いくら何でもいかんでしょう…看板に偽りありも甚だしい…とひとまずは言わなきゃならんと思う
(ちくま新書の「入門」シリーズにはウィトゲンシュタイン入門になっていない「ウィトゲンシュタイン入門」とかこの点で「悪い先輩」があるが… ちょっとどうにかした方がいいのではないかと思う… まぁもっとも「プラトン入門」よりはマシであるが(あれよりひどいものはそうそうないと思う…))
いや… 読み物としては案外面白いのである… 普遍論争に関する通説を覆すためにスコトゥスとオッカムの「対照」に「存在の一性」という側面から光を当ててみて、そこに背景としてのアヴィセンナとかも絡めてみた、その意図はよく分かるし、思索の流れとしてはなかなかスリリングでもある。用語解説も面白くてためになる。読後感は決して悪くない…
しかし…だからこそ、ここに「中世哲学入門」という看板を掛けてはいけないと思うのである…
少なくとも、これに足して「トマス・アクィナス入門」が必要だろう… いやもっと色々必要かもしれない(「中世イスラーム哲学入門」とか…)… 「いやそれはそれを別に読んでいただいて…」というのであれば、なおさら「入門」の看板を掛けては、掛けさせてはいけないと思うのである…
面白い!けどダメですねこれは…と言わざるを得ない… 何とも複雑でモヤる… おそらく評者・私はこの著者の「普遍論争」を読んでしまうだろうけど…
言うまでもないカント三大批判書最後の難所である… 評者・私もちゃんと読むのは初めてである(岩波文庫旧版は所有しているはずである)…
「純粋理性批判」は確か院生時代に結構楽しく読めたはずで、そして「実践理性批判」は先日読んだばかりである。というわけで満を持して… なのであるが… あまり読まれていないのがよく分かった…これは難物である…
議論の抽象度が高く、特に自然の目的論を論ずる後半はそれがさらに高じていてかなり厳しい… 評者・私もどうにか何とか読み切ったという感がぬぐえない… 一般人にはかなりハードルが高いと思う(というわけであらかじめ何か解説書等を読んでからの方が取り組みやすいかもしれない…(とはいえ具体的に何が良いのかまでは無責任だが評者・私も分からない))
評者・私もカントの議論をどれだけ「追えた」ものか自信はない…
純粋理論理性と実践理性との乖離を埋めるものとしての美的判断力… ということはもちろん分かるのだが… それを裏付けるカントの理論が正直それほど追いやすいものとは思えず… うまくいっているのかいないのか、まさにその判断が付かない(冗談ではなく本気でそう思う)
そして、時間をおいてまたもう一度… というにはあまりにも大きい… いつかまた読みたいと思う時までごきげんよう…というのが今の所の感想である…(正直すぐまた読みたいと思えるものではない…)
前半の美的判断力を論じてから芸術論に進むあたりは「素人」でも割と面白く読めるかもしれない(が…繰り返すと後半が難所である…)
カントが意外と音楽を低く見ていることは意外であり驚きであった(この点、カントの「フォロワー」としてのショーペンハウエルと好対照である… ニーチェがショーペンハウエルを愛読し続けていたのも何となく分かる気がする…)
さて… 今回光文社古典新訳文庫版を試してみたのは、岩波文庫版の翻訳があまりよくないとの評判を踏まえてのことであった。そこで、あえて「実践理性批判」は岩波文庫版で読み、「判断力批判」はこの新訳を選んでみることで、何か違いが実感できるか実験してみたのである…
結果は… 恐らく…この書はそんなことでどうにかなるくらい生易しいものではないのかもしれない… 特に強く実感できるほど読みやすいとは思えなかった… とはいえ、細かく段落が分けられ、丁寧に見出しが付けられているのは大いに助かった。とはいうものの… それは読み通すためであって…カントの思想を追うことには、どれだけ足しになったのか… 読者である評者・私の責任ではあるが、心もとない… 繰り返すが、やっぱりこの書は難物である…
実は光文社のこのシリーズを読むのは初めてなのだが、ページの折り込み部分の結構厳しい所まで印字されているのが使いづらいと思ってしまった… 見開き左ページの第一行目に線を引こうと思うとなかなかに苦しい…
なかなかに大変な「相手」であることが分かった…(しかも三批判書はやはりこの順番に読み進めるべきだということも分かる…) 難物ではあるが、これがこのように文庫版で手軽にアクセスできるのはすばらしいことである…