京都大学バードマンチーム Shooting
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1999年機「すなお」設計資料
1 設計コンセプト
今年も、機体最後尾にプロペラを配する愛称「ケツペラ」式の機体で鳥人間コンテストに参加する。
1.1 安定性の向上
去年の大会におけるフライトでは、離陸直後にスパイラル・モードに入ってしまい、175mという不本意な記録に終わってしまった。機体の製作精度や、パイロットの体力等に関しては主力チームに遜色のないものだという自負があっただけに、非常に残念であったと同時に、機体の安定性の重要性を痛感させられた。
チームとしてのレベルが、長距離飛行を目指すような位置には到達しておらず、とりあえず真っ直ぐ飛ばさなければならないという位置にあるのではないかという考えのもと、空力設計を見なおし、なにより、
真っ直ぐ飛ぶ
機体を作ることを目標とする。
機体名も、そのような素直な特性を有する機体になることを願って、「すなお」と名付けた。
1.2 美の追求
飛行機は、やはり美しくなければ飛ばない。これは、多くの人に共通する考えであろう。当サークルもそういう飛行機哲学の下、
美しい機体を作る
ことをもう一つの目標とする。
機体の概観が美しいことに拘るのは当然のことであるが、当サークルは、設立当初からの伝統として伝わっている機体の製作精度に関しては、日本の人力飛行機界でも有数のものであると自負しており、今年も、例年通り、細部にわたって美しさを保った機体を製作することを目標とする。
2 主翼
2.1 平面形
機体の誘導抵抗の減少、局所揚力係数の最適化、平面形の美しさの追求等の兼ね合いから、2段テーパー翼を採用した。
2.2 翼形
二次元翼形性能計算コードXFOILにより、主翼の定常飛行時のReynolds数に見合った翼形の選択を行った。
使用翼系は、翼端側の一部にDAE31を使っている以外は、全部DAE21である。これは、最も翼弦長が長い部分でのReynolds数において、DAE11とDAE21の性能を比較した結果、定常飛行時には、DAE21の方が性能が上だという結論に達したためである。DAE21からDAE31への徐変部分は、定常飛行時のReynolds数が、DAE31の使用Reynolds数であるRe=250,000付近になる部分を選んだ。
2.3 構造
桁、捻り止め
主翼桁及びその捻り止めには、三菱レーヨン社製のCFRPパイプを使用する。
リブ、プランク材
リブ、プランク材ともに、積水化成社製のエスレンフォームを使用する。プランク材は、剛性や強度上の問題、それに起因する空力的な問題を考慮し、去年に引き続き、エスレンフォームを熱線カッターにより3次元に切り出したものを使用する。
後縁材など
後縁材や、リブキャップ、桁穴補強材には、バルサを用いる。厚さや材質は、使用に際して要求される剛性、強度に合わせて適宜変えてある。
フィルム
主翼表面には東レ製のルミラーPETフィルムにより覆い、熱収縮にかける。
2.4 主翼諸元
以下に、主翼の諸元を示す。
主翼諸元 | |
翼幅 | 28.8m |
翼面積 | 26.85u |
翼弦長(翼根) | 1.052m |
翼弦長(翼端) | 0.4732m |
翼型 | DAE21-DAE31 |
1段目taper比 | 0.89 |
2段目taper比 | 0.45 |
空力平均翼弦 | 0.9643m |
3 フレーム
パイロットが機体に搭乗した際に、トレーニング時との違和感を感じないように、ペダルや操縦桿(ハンドル)は、パイロットが普段トレーニングの際に使用しているMTBとほぼ同様なものになっている。材質は全てCFRPパイプである。
4 駆動系
プラットホームからの離陸時に十分な速度が得られるよう、今年も、駆動輪を採用した。ケツペラ機特有の長いドライブシャフトには、重量の軽減や強度上の問題から、CFRPパイプを使用し、後部胴がたわんだ際にも駆動効率を維持する様、ユニバーサルジョイントを介する。
5 尾翼
5.1 水平尾翼
水平尾翼には、若干スパンを伸ばした以外は、去年度からの変更点は、とくにない。なんの変哲もない矩形翼である。以下に、水平尾翼の諸元を示す。
水平尾翼諸元 | |
面積 | Sh=2.01(u) |
span | bh=3.5(m) |
アスペクト比 | ARh=6.09 |
翼型 | NACA0009 |
モーメントアーム | Lh=4.63(m) |
静volume比 | Vh=0.36 |
動factor比 | Fh=1.72 |
5.2 垂直尾翼
昨年度との最も大きな相違点が垂直尾翼で、去年までは後部胴の下側に吊り下げるような特異な形式であったが、アスペクト比の不足からか、ラダーが効かないという症状が見られたので、この改良を目的に、モーメントアームを伸ばし、勝つ、人力飛行機としてはオーソドックスな、後部胴の上下に突き出た垂直尾翼に変更した。以下に垂直尾翼の諸元を示す。
垂直尾翼諸元 | |
面積 | Sv=1.7(u) |
span | bv=2.5(m) |
アスペクト比 | ARv=3.68 |
翼型 | NACA0009 |
モーメントアーム | Lv=5.28(m) |
静volume比 | Vv=0.0116 |
動factor比 | Fv=0.00213 |
5.3 構造
構造、使用材料は、主翼と殆ど同じである。
6 操縦系
ステンレスワイヤーを介して、水平尾翼、垂直尾翼を操舵。操縦桿は、自転車のハンドルとほぼ同様で、ハンドルを切ることで垂直尾翼、グリップを回転させることでエレベーターを操縦する。
7 プロペラ
当サークル初代会長、現航空宇宙技術研究所研究員である原田正志氏の指導の下、サークル独自に開発した設計プログラムにより、プロペラの設計を行った。なお、桁は従来通りCFRPパイプだが、リブ間を詰め、リブ材料としてハードバルサを用い、剛性と空力性能の向上に努めた。以下に、プロペラの諸元を示す。
プロペラ諸元 | |
回転半径 | 1.38(m) |
回転数 | 180(rpm) |
翼型 | DAE51 etc. |
8 パイロット
去年に引き続き、科学的トレーニングを導入することで、長距離飛行に耐えられる身体機能を効率的に育成。
1999年4月24日には、(財)スポーツ医・科学研究所において、本格的な体力測定を行った。そのときのデータを下に記載する。
パイロットデータ | |
身長 | 173.5cm |
体重 | 55.1kg |
体脂肪率 | 10.9% |
屈伸展筋力 右/左 | 207Nm / 198Nm |
屈伸展筋力(体重あたり) 右/左 | 3.8Nm/kg / 3.6Nm/kg |
無酸素性パワー(体重あたり) | 9.8W/kg |
最大無酸素性パワー(体重あたり) | 15.5W/kg |
最大酸素摂取量(体重あたり) | 68.3ml/kg/min |