ドラムの基本的なフレーズを紹介しましょう。
 一般的な8ビートと16ビートはここで、シャッフルやハチロクなどのリズムは次節で紹介する予定です。
 また、典型的なフレーズの例も次節で取り上げます。

 まず、図1を見てください。
 バスドラムとスネアドラム、それにハイハットを加えた、ごく一般的な8ビートです(サンプル1)。
 8分音符で刻み続けるハイハットを基調として、バスドラムを1拍目と3拍目、スネアドラムを2拍目と4拍目に入れています。
 非常にオーソドックスであり、何のひねりもありません。
 このフレーズを使ってはいけない、ということではありませんが、演奏している側も聴いている側も退屈感を覚えることでしょう。
 こういうドラムフレーズを使ってもいいのは、曲そのものが速いためあまり凝ったフレーズを作ることができない場合くらいです。
 具体的には昔のヘヴィメタル、最近のメロディックハードコアなどです(注1)。
 これではあまりにも芸がないので、せめてバスドラムに変化をつけましょう。
 図2を見てください(サンプル2)。
 バスドラムの回数を増やしましたが、まだ何か物足りません。
 実際に聴くとわかりますが、平坦な雰囲気という点では図1とたいして変わりません。
 8ビートはロックやポップスなど、いわゆるノリのいい曲に使われるリズムなのですが、このフレーズではドラムはただ単にメトロノームの役割しか果たしていないように思われます。
 これは、このフレーズのバスドラムが4分音符を元に刻まれている、ということに起因します。
 たとえば、図3を見てください(サンプル3)。
 このフレーズでは、以前に説明したシンコペーションをバスドラムに応用し、4分音符では割り切れないバスドラムを実現しています。
 これにより、平坦な雰囲気がだいぶ薄れました。

 では今度は、バスドラムを単調なものに戻し、スネアドラムを変えてみましょう。
 図4を見てください(サンプル4)。
 スネアドラムが3拍に1回出てきます。
 非常に奇妙に聞こえるので、ずっとこのフレーズを使い続けるわけにはいきませんが、フィル・インのときなどは役に立ちそうです。
 図5は4拍目のスネアドラムをちょっと変えたものです(サンプル5)。
 何となく跳ねた感じがするので、メジャースケールのポップスなどにはそのまま使えるでしょう。
 なお、ハイハットをいじるのはそれほど効果がないため、ここでは割愛することとします。

 その他のドラムを使ってみましょう。
 図6はタムタムを使用した例です(サンプル6)。
 タムタムを使うと両手がふさがってしまうため、ハイハットがきちんと刻めなくなってしまいますが、若干音がさびしくなるだけでさほど実害はありません。
 図7はカウベルを使用した例です(サンプル7)。
 サンプル6と同様、ハイハットをきちんと刻むことができなくなりますが(注2)、カウベルの金属音がハイハットの代わりを果たしてくれるので問題ありません。
 なお、図7では「△」をカウベルとして表記しています。

 今度は16ビートの基本を紹介しましょう。
 図8を見てください(サンプル8)。
 ハイハットが16分音符で刻まれ、バスドラムとスネアドラムが交互に表れます。
 これまた何のひねりもない上、8ビートと違って実際の使い道もほとんどありません。
 そこで、こちらでもまたバスドラムを少し変えてみましょう。
 図9はやはりバスドラムをシンコペーションさせたものです(サンプル9)。
 これだけでずいぶん雰囲気が変わりましたね。
 このフレーズは、図10のようにハイハットにほんの少しオープンを混ぜるとより落ち着きます(サンプル10)。
 今度はハイハットを少し変えてみましょう。
 図10で4拍目にオープンを混ぜたように、図11では6拍目にオープンを入れています(サンプル11)。
 この「6拍目のオープン・ハイハット」というのはいわば「誰もが使う隠し味」で、もはやたいした効果をあげることができなくなっています。
 曲調にもよりますが、16ビートならば入れておいて間違いはないでしょう。
 スネアドラムを変えるのもかなり効果的なのですが、そのあたりは次節で「典型的なフレーズ」として紹介します。


この節の注釈

注1……しかし、最近の速い曲は速い曲なりにフレーズを作っているので、一概にこうだ、と断言することはできません。いずれにせよ、あまり単調なドラムパターンを繰り返すのは避けたほうが無難でしょう。
戻る

注2……ところがMIDIデータなど実際に楽器を弾かない作曲では、ドラマーの手が5本くらいあるようなフレーズを平気で書いたりしています。ぼくはそういう不自然な曲作りがあまり好きではないので、たとえDTMでも生身の人間に演奏可能なフレーズしか使用しません。
戻る

[簡易作曲講座] 表紙