続いて、ドラムの応用編です。
 図1は8分の6拍子、通称ハチロクの基本的なフレーズです(サンプル1)。
 ハイハットが8分音符で6回、1拍目にバスドラム、2拍目にスネアドラムと、8ビートや16ビートと同様何のひねりもない作りになっていますが、ゆったりした曲ではこのまま使っても問題ありません。
 ポップスなどの跳ねた感じを出すためには、図2のようにバスドラムをもう少し増やすとよいでしょう(サンプル2)。
 ハチロクは後述するように8ビートのシャッフルとほぼ同義ですから、図3のようにハイハットを4回に減らすとより効果的かもしれません(サンプル3)。
 ハチロクというのは以前書いたように(8分音符x3)x2という構造をしているのですが、これを3拍子のリズムだと考えると(8分音符x2)x3というかたちになります。
 そこで、ハイハットの代わりにライドシンバルを使い、図4のようにライドシンバルを3拍子で刻むと、ハチロクなのか3拍子なのかはっきりしなくなり、なかなか面白い効果を生み出すことができます(サンプル4)。
 このライドシンバルの使い方は非常に有効なので、覚えておいて損はありません。

 ではこれまで出てきた基本的なドラムフレーズを少しアレンジして、シャッフルというリズムについて説明しましょう。
 以前書いたように、シャッフルは3連符を基本としたリズムです。
 たとえば、前節の基本8ビートをシャッフルにすると図5サンプル5)になりますし、基本16ビートをシャッフルにすると図6サンプル6)のようになります。
 前述したように、図5図3とほぼ同じものです。
 単純に楽譜上の表記が異なるだけですので、まったく同じものだと思っておいても問題はないでしょう。
 このシャッフル化は最近のダンスビートなどの曲を作る際に、非常に有効な手段となります。

 では、具体的にどのようなドラムフレーズがあるのかを見てみましょう。
 8ビートは基本となる音符が8分音符で、1小節に8個しか入らないため、それほど凝ったフレーズを作ることができません。
 また、曲の速度もある程度速いものになるため、繰り返しが多くなります。
 したがって、どうしても単調なものになりがちです。
 8ビートの曲を作る場合には、複数の8ビートパターンを使うとよいでしょう。
 前節で紹介したものと組み合わせやすい例として、今回はひとつだけ紹介します。
 図7はバスドラムとスネアドラムを倍にして位置を交換し、力強さを前面に押し出したフレーズです(サンプル7)。
 パンクなどではたまに使われることがあるでしょう。
 このフレーズに入る直前、このフレーズの終わる直前に、それぞれフィル・インを入れておけば、8ビートの曲としてはきちんとしたドラムになっているように聞こえます。

 16ビートは基本となる音符が16分音符なので、かなり細かくドラムを入れることができます。
 前節で触れた、ハイハット、スネアドラム、バスドラムをすべていじったものを紹介しましょう。
 図8は非常に典型的な16ビートのフレーズで、あらゆる曲に用いることが出来るすぐれものです(サンプル8)。
 このフレーズはシャッフルにしても同様に有効で、図9のようになります(サンプル9)。
 速い曲からゆったりした曲まで万能なので、ぜひ覚えておいてください(注1)。
 ダンス系の曲でやたらに使われるフレーズとして、図10があります(サンプル10)。
 オープン・ハイハットが多用されており、非常に金属的な感じがします。
 これにちょっとオーケストラヒットなどを乗せれば、あっというまに某ダンス系レーベルのアルバムに入れてもおかしくないものが完成します(サンプル11)。
 ぼくは便宜上このフレーズを「つくちーつくちー」と呼んでいます(注2)。

 ドラム編はこのあたりで終わりにしましょう。
 タムタムなどを織り交ぜれば、もう少し面白いフレーズも作れるかもしれません。
 それぞれ実験してみてください。


この節の注釈

注1……ぼくが16ビートの曲を作るときは、たいていこのドラムパターンを使っています。たとえば「楽曲貯蔵庫」に入っている「Im Dschungel die Betonbauten」の前半がそうです。
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注2……すでに気づいていると思いますが、ぼくはこういうリズムが大嫌いです。実際に人間が微妙なニュアンスをつければまた違うのでしょうが、打ち込みでこのリズムを使うと、どんな曲でも同じようにしか聞こえないからです。だというのにこういうリズムや平坦なリズムを執拗に使い続け、なおかつコード進行もろくに考えずに同じ進行ばかり使い続け、メロディも昔の曲の使いまわしばかりで、それでいて「No.1ヒットメーカー」などと呼ばれてしまう人がいるのですから、音楽というのはわからないものですね。この注釈、かなり悪意が入ってるな(^^;
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