このコーナーは、作曲をしてみたいけど具体的にどうやったらいいのかわからない、という人を対象にしています。

「センスがないから」「理論を知らないから」
 そういった理由で作曲できない人というのは結構いるのではないでしょうか。

 大丈夫です。

 ぼくを含めて素人のセンスなどというものは似通ったものですし、その程度のものならばいろいろな曲を聴いていれば勝手に身につきます。
 理論なんていうのも大したことはありません。
 ただ「こんな感じで来たから次はこんなふうになったほうがいいかも」くらいの自然なつながりかたをちょっと勉強すれば充分です。

「オリジナリティがないから」
 そう、そういう理由も考えられますね。

 まったく問題ありません。

 オリジナリティは作曲してるうちにできます。
 だいたい、世の中にこんなに音楽があふれているのに、まったく独自の音楽を作るなんてことはちょっと不可能に近いでしょう。
 しかも、それなりに聴ける音楽を作るのならなおさらです。
 何かに似ている、どこかで聴いたことがある、そんなことはこのさい忘れてしまいましょう。
 コードの自然なつながりかたなどそうたくさんあるわけではないし、そのコード進行にあうメロディも限られてきますから、何かに似ているのは当然のことなのです。

 さらに言ってしまえば、盗作したってまるで構いません。
 あ、まるっきりそのまま、というのはダメですよ。
 それでは著作権侵害で立派な犯罪になってしまいます。
 でも、コード進行の一部だとか、メロディの一部の音の流れとか、そういう部分は借用してもいいでしょう。
 だって、完全にオリジナルだと思っていても、それは結局どこかで聴いた曲の一部だったり、いろいろな曲の寄せ集めだったりすることが多々あるのですからね。
 わざと他の曲に似せるのは問題があるのかもしれませんが、少なくとも、作曲に慣れるまではそういう意識的な流用はどんどんやるべきです。
 繰り返しますが、オリジナリティは作曲しているうちにできますから。

 まあ、どうしても他人の曲を流用するのは気がひける、という人もいるでしょう。
 そういう人も心配ありません。
 世の中をざっと見渡しても、結構似ている曲があるでしょう。
 これは、それらの曲の核となる部分が同じだからです。
 それらの曲は、どちらかがどちらかの盗作なのでしょうか。

 それは違います。

 先ほど述べたように、聴きやすい曲を書く以上、すでにあるものと似通ってしまうのはしかたのないことなのです。
 作曲家は「それもやむなし」として、すでにある曲と同じ核となる部分を使います。
 要するに、この核の部分は著作権フリーなのです。

 そこでまず、この核となる部分だけ抜き出してみましょう。
 それはコード進行だったりドラムのフレーズだったりします。
 ではそういった核の部分だけ寄せ集めて、曲が作れないものでしょうか。

 無論作れます。

 むしろ、名曲の核だけで作った曲は、その組み合わせかたさえ間違えなければ、名曲となる可能性を充分秘めているのです。

 そう、ここは、積み木を組み立てるように音楽を組み立てる、その具体的な部品、および組み立て方法を紹介するコーナーです。
 したがって、すでに自分のスタイルを確立している人は読む必要はありません。
 むしろ読むと害になるかもしれません。

 あーっ、そこの人、帰らないで。
 多かれ少なかれ、曲を作ってる人ってこういう道を通ってきたんです。
 世間で他人のコピーバンドをやっている人たちだって、作曲の勉強としてやっていることがよくあるんです。
 だから「インチキだったら読まなくていいや」と思った人は、とりあえず読んでみてから判断してください。

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