それではメロディを持ったサブメロディ、すなわち狭義の「サブメロディ」について説明しましょう。
サブメロディを説明するためにはとりあえずメロディが必要ですが、ひとつのメロディに対してさまざまなサブメロディをつけるのではなく、どのようなメロディにはどのようなサブメロディが有効か、を考えながら説明します。
まず和音をベースにサブメロディをつける方法です。
仮にハーモニー的手法と名づけましょう。
ごく一般的なポップスやロックの場合を考えてみましょう。
ここでは図1(サンプル1)をメロディとして、これにサブメロディをつけるかたちで学びます。
まずサンプル1に、ただ単純に3度(半音3〜4個分)下がっただけのサブメロディをつけてみましょう。
図2(サンプル2)がこの場合のサブメロディです。
そこそこまとまっているように聞こえますが、コードを無視して3度下げただけなので、たまにコードからはずれている和音が鳴ってしまいます。
たとえば図3の場所は、本来コードはCなのですが、サンプル2においてはサブメロディでラの音を出しているため、Amに聞こえてしまいます(注1)。
ここをちゃんとCのコードで鳴らすためには、ラではなくソの音を使わなければなりません(図4)。
つまり、ただ単純に3度下げただけのサブメロディでは、コードに見合ったメロディラインを作れない、ということです。
それでは図5(サンプル3)を見てみましょう。
こちらは作り方そのものは先ほどのサンプル2と似たようなものですが、今度はちゃんとコードを考えて作っています。
どうでしょうか。赤い音符部分の違和感がなくなりましたね。
なお、この手法は一般的である上非常に簡単なので、ぼくが「楽曲貯蔵庫」で発表している自作の曲の大部分がこの手法で書かれています。
次に「メロディのない部分にサブメロディを置く」、つまりフーガ的手法を説明します。
フーガ的、と書きましたが、本当にフーガをサンプルにしたほうがわかりやすいでしょう(注2)。
図6を見てください(サンプル4)。
奇数番めの小節は8分音符で構成されており、偶数番めの小節は全音符で構成されています。
最終小節だけ8分音符でできていますが、これはフレーズを完結させるための例外です。
ではこれにサブメロディをつけてみましょう。
先ほどとは反対に、奇数番めの小節に全音符、偶数番めの小節に8分音符を使います。
こうすることによって、メロディが単調なときにサブメロディが活躍することができます。
具体的には、図7を見ていただければわかります(サンプル5)。
どうでしょうか。
サンプル4のときのように間延びしていませんね。
なお、最終小節だけは前述のハーモニー的手法のサブメロディをつけています。
「楽曲貯蔵庫」においては「Why Don't You Have a Game?」の前半部分がこの手法を使って書かれています。
ほかに、ハーモニー的手法によく似ていますが、3度下げるだけではなく、5度上げたり1オクターブ下げて5度上げたり(つまり4度下げる)、コードの理論に逆らわないかぎり自由にサブメロディをつける方法もあります。
楽譜はつけませんが、「楽曲貯蔵庫」の「Der Weg zum Tod(zweit)」が全編その手法で書かれています。
「Der Weg zum Tod(zweit)」はGS音源用なので、一部を抜粋してGM音源に書き直したものをサンプル6として例にあげます。
実際にこの手法を使う場合にもっとも大切なことは、サブメロディだけでもメロディとして聞こえること、つまりあまり不自然なフレーズを使わないことです。
そのためにはメロディの章で説明したとおり、若干コードから外れてもかまいません。
メロディの作り方に沿って作れば、たぶん間違いはないと思います。
短いですが、これでサブメロディの説明を終わりましょう。
次章はアレンジについて説明します。
注1……あるいはそれほど気にならないかもしれません。しかし、いずれ実際に作りはじめると、かなり不自然な例が出てくると思います。できるだけ早いうちにコードに沿った作曲法を身につけておいたほうがのちのち楽でしょう。
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