宴(ひな祭りにて...後編)







ピンポーン


「はーい。」


来客を知らせるベルの音に台所にいたシンジが駆け付ける。


水仕事をしていた手をエプロンで拭きながらドアを開けると
そこには無精ひげを生やした男がたっていた。

「よぉ、シンジ君。元気かい?。」


「加持さん!。」


その男加持リョウジの姿を確認したシンジの顔が 無意味に輝く。


加えて、シンジの視界に着物を着ている女性の姿が入ってきた。


「リツコさん、それにマヤさんまで。」

「あら、シンジ君、こんばんわ。」

「こんばんわ、シンジ君。」

リツコとマヤはそれぞれシンジの顔を確認すると、
「さぁ、どうぞ上がってください。」
と、シンジに促され、部屋の奥へと入っていった。



「あれ?。」

そして、その裏にはリツコ達の影になって見にくくなっていたが、 綾波レイの姿まであった。

「綾波も来てくれたんだ。」

「絆だから。」


え?・・・・・

意味不明の言葉に数瞬固まるシンジ。



「ほら、シンジ。いつまでもそんなとこ立ってないで。早くこっちきなさい。始まるわよ。」


「あ、う、うん。」

アスカの声でようやく正気に戻るシンジ。
シンジが気づいたときにはすでにレイの姿は目の前から消えていた。


アスカに連れられるようにリビングに戻るシンジ。


その後、ヒカリ、トウジ、ケンスケもあらわれ、
いつものメンバーによる雛祭りパーティーと称した飲み会が始まった。




「ほら、シンちゃん。ビールがないわよ、ビール。」

開始、30分、
5本ほど用意していたビールもすでに空となっていた。
驚異的とも言えるネルフの胃袋である。


「はいはい。」

生返事をしながるシンジ。


だが、シンジが立ち上がろうとしたその時、
隣に座っていたアスカにグイッと服を引っ張られ、
シンジはバランスを崩し、アスカの膝の上にその頭を埋めた。

「あ、アスカァ。」

情けない声を出すシンジ。

「だ〜め、シンジは私の横にいるの!。」


アスカ・・酔っぱらっているな・・

シンジはアスカの膝の上に顔を乗せながらそう思っていた。


「相田!、あんたシンジの代わりにビール持ってきなさい。」

すみ〜の方で1人寂しく座っているケンスケに目をつけたアスカ。

「な、なんで俺が・・。」

「イヤだって言うんなら、学校で私やマヤの写真を内緒で売りさばいていること、みんなにばらすわよ!。」

大声で言うアスカ・・
これではヒミツも何もあったものではない。


「へー、相田君そんなことしてたんだ・・。」

ミサトが最後のビールを飲みながら言う。

「不潔・・。」

マヤに至っては完璧に軽蔑した目をケンスケに向けていた。




シクシクシク

ケンスケはすみ〜の方で1人涙を流した。








「シンジぃ、きしゅ〜。」

宴会も佳境、
アスカの壊れ方もその勢いを順調に増してきていた。


アスカはそう言いながら、シンジに抱きついて行く。


「あ、アスカ、やめてよ。」

とりあえず抵抗するシンジ。
しかし・その表情はとても嬉しそうだった。

「そ、そんな・・シンジは私が嫌いなのね・・シクシク。」

シンジに断られると今度は、
誰が見ても芝居だと分かる泣きまねをするアスカ。

シンジは周りの視線を気にしながらも

「そ、そんなことないよ・アスカ。」

アスカが酔っているということで
自分の思いの丈を伝えた。

「僕は・・アスカの事が好きだから。」

そう言った。

「ホント?。」

先ほどとはうってかわってシンジに笑顔を見せるアスカ。
宴会は二人の独壇場と化している。
他の出演者はその勢いに会話を交わす気力さえ無くなっていた。

「う、うん・・。」

「私もシンジが大好き!。」

シンジが頷くのを見てアスカはシンジに抱きつく。



シンジに執拗な抱擁をくり返すアスカ。

「うう〜ん・・シンジぃ。」

シンジもアスカが酔っているということで
それを甘んじて受けていた。







「じゃあね、碇君。」

「またな、シンジ。」

「また明日シンジ。」




「またな、シンジ君。」

「シンジ君それじゃ。」

「シンジ君またね。」




そして、六者六様の言葉を残して宴会も終焉を迎えた。







「さてと、。」

シンジはそう気合いを入れると、
すっかり眠ってしまっているアスカを見下ろす。


しかたがないなぁ。


と思いながらシンジはアスカを担ぎ上げ、
アスカの部屋へと運んだ。







アスカを部屋に運んだ後、シンジは宴会の傷跡を
片づけるため、再びリビングへと戻ってきた。



そこには未だビールを片手に飲んでいる、ミサトの姿があった。


「アスカ眠った?。」

「ええ、ぐっすり。アスカも今日は飲みすぎたんだと思います。」

「飲み過ぎたねぇ。」


ミサトは意味深にそうそう呟く。

「どうしたんですか?。」

「いえ・・私ずっとアスカの方を見てたんだけど・一口もビールなんて口にしてなかったのよねぇ・・。」

「え、え・・と・・それじゃ。」

「まさか甘酒で酔っぱらうわけないしねぇ。」


シンジの顔が段々と赤くなる。


「じゃあ、アスカは酔っぱらってあんな行動をとったってことじゃないってことですよね。」

「そうなるわね。」

ミサトは最後のビールを飲み下すと。
おもむろに立ち上がった。

「じゃあ、私、寝るから。 シンちゃん、後のこと宜しくね。」

ウインクをしながらシンジにそう言い残すとミサトは、その場を後にした。




その夜、シンジは悶々とした気持ちの中、
なかなか寝付けなかったという・・・








あとがき


す、すみません・・vinceさん
今回は珍しく墜ち無し・・しかもSS自体が軽い

これがスランプと言うものなのか・・(言い訳)

苦情・要望・その他お待ちしています

それではこれにて失礼します。






いえいえ、本当にありがとうございました。

                  vince



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