勇気


躊躇した。

格好を付ける必要なんて、ない。
この胸の内の思いを、ありのままに伝えるだけでいい。

俺がどう思われたって
そんなことは別にどうでもいい。

ただ、この思いを、伝えたいだけ。

それなのに、俺はどうしてこんなに迷ってる?

ただ一言、あいつを呼んで、告げるだけ。
なのにどうしてこんなに俺は・・・。

別に、俺があいつにどう思われたって
俺にとっては痛くもない、はず。

それとも、これは俺の強がり?
心のどこかで、あいつにはそんな風に思われたくないと
そう願ってるんだろうか?

自分がわからない。

俺は、こんなにも気弱な人間だったんだろうか。
それとも、これが「人間として成長した」という証?

これほどまでに迷い、悩んでいる俺。
だのに、あいつは俺の苦悩なんて知らん顔さ。
いい気なもんだ。


そして俺は決めた。
勇気を出すことを。

たった一言を、伝えるためだけに俺は勇気を振り絞った。







「おい猫目、チャック空いてるぞ、恥ずかしー!!」

「・・・そ、そんなデカい声で言わなくても(泣)」



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