A Note about the possibility of
Trance Live Paformance and " UNI "...

(ver.1.01)


text by nickcage

 
「確かに、普通にテクノを好きな人の中には、トランスってダサい、とか、ヘビメタみたい、などと言う人はかなりいます。それと同じことなのですが、僕の友達の中には、テクノは大嫌いだけどトランスのパーティーで踊るのは大好き、というロックファンも何人かいます。

 彼らにとっては、結局、トランスって、テクノじゃないんですよね。曲の展開とか、ブレイクとか、メロディーとか、そういう部分のうねりの具合は、インダストリアルやテクノよりもロックに近いと僕も思います。」


 ……と語るのは、小説家にして『レイヴ・トラヴェラー』の著者である 清野栄一 氏。かつて私と交わした(レイヴにかんする) 往復電子メール (注;のちに『地の果てのダンス Dance in the Desert』として、 メディアワークス社より刊行)の一節だ。


 そう、uniについて語る前に、まず前提としておきたかったのが「トランスは(いまどきの)ロックなのだ」ということ。もちろんここで言う“トランス”は(昨今流行りのユーロトランスではなく)サイケデリック・トランスの話。ユーロトランスが(どちらかというと)いわゆるハウス的アプローチから発展したサウンドだとすれば、サイケデリック・トランスは、やっぱりロック……それもハードコアやヘヴィメタルに近い音色や感覚に根ざしたサウンドだろう。

 そしてまた、いわゆるテクノとトランスの間にも微妙な差異がある。もちろん「テクノもトランスも大好き!」というリスナーだっているけれど、(打ち込み音楽としての方法論を共有しているわりに)テクノとトランスには……“水と油”的な相容れない側面もまた存在する。それもまた「トランスは(テクノより)ロックに近い!」という(やや乱暴な)要約によって、説明できなくもない。

 こうしたジャンル談義はあくまでもひとつの目安に過ぎないが……トランス・パーティにおいてDJプレイ以外の要素として、人気ユニットの“ライブ・ステージ”がパーティの目玉になるという近年の現象もまた、この「トランスとロックの近似性」から理解されるのではないかと思い……あえてそんな話題から切りだしてみた。


 もちろんトランスのみならず、テクノにもライブという趣向はあるけれど、またその一方で「ライブ演奏っていっても、あらかじめセットされたプログラムのスタートボタンをただ押すだけじゃないの?」みたいな疑念が聞かれないこともない。しかし真に優れた“ライブ”は、あらかじめ用意された曲を再生するだけではなく、即興的なアレンジも含め、オリジナルとまた違った表情を見せるプレイにこそ、その真骨頂があることを指摘しておくべきだろう。

 とはいっても、トランスやテクノのライブ・パフォーマンスは、しょせん電子楽器やデジタル音源機器のつまみ類を操作するようなものであるがゆえ……ぶっちゃけた話、見た目としては(かなり)地味だ。だからというわけでもなかろうが、トランス・ライブにおいて電子楽器以外にも、その場で楽器を生演奏する趣向が、少なからず認められるようになってきた(そのことがまた、前述した「トランスとロックの親縁性」を、さらに補強するような感もある)。

 思いつくまま挙げてみると Tim SchuldtやSun Project、Electric Universeあたりのユニットが、エレキギターを導入したステージで観衆を湧かせていたし、そして何よりも……生演奏を駆使したライブで評判になったのが、サイケデリック・トランス界の重鎮Juno Reactorだ。


 では、我が国に目を向けてみると……日本のバンドがトランスパーティにおいて、ライブ演奏を披露するケース、これまた近年増加してきた傾向だ。しかし少なからずのライブが(どちらかというと)ロックバンドがトランシーなナンバーを演奏する、という印象が色濃いのに対し、(本稿の主役たる)uniのライブは、あくまでもロック的なグルーヴや音感をトランスライブに継承していった……その微妙な違いによって、今日の人気をかち得たような感もある。

松田(マッチョ)のエロクトロ機器が奏でるメロディとビートに、山崎(オショー)のロートタムの乾いた打音が切りかかる。そう、生演奏のダイナミズムと電子機器のトランス感が絶妙にブレンドされたグルーヴ……いわゆる“理想的な”トランスライブが、uniの二人によって実現したのだ。

 どうしてuniにだけ、それが“なしえた”のか? 二人の演奏技術が、とんでもなく卓越したから……ということでもなさそうだ。どうも彼らは天才肌というより、むしろ曲作りやライブ演奏に対する不断の努力に支えられた、いわば努力派タイプらしいから。では曲はどうか? 彼らの代表曲である'sarasvati'を例に取ってみても、一度聴いただけで忘れられないメロディ、ノリやすいテンポ、サウンドメーキングにも深みと奥行きがある。


 彼らのライブを体験した者ならわかることだが、uniの楽曲にはいにしえの……そう、まだサイケデリック・トランスがゴア・トランスと呼ばれていた頃の、時には“泣き泣き”とすら形容されるような叙情的な部分と、バンギンでアップリフティングなトライバル・ビートが巧みに織り込まれている。

 さらにはその楽曲を演奏する際のセンス……これは必ずしもマッチョの奏でるベーシックトラックに限った話でもない。長年ロックバンドのドラマーをやっていたというオショーは、バンドのドラマーというスタイルに面白味を感じなくなり、自分ひとりでパーカッションを叩き続けた試行錯誤の末、現在のuniスタイルに開眼したという。ひとつ間違えると「カラオケテープをバックに、楽器をかき鳴らしている」だけになりかねない、この手のライブの罠にはまることなく、uniはダンサブルなトランス感と視覚的なケレン味……その両方を兼ね備えることに成功しているのだ。

 前述したJuno Reactorを筆頭に、さまざまなトランスの巨人たちの影響を受けつつも、uniならではのサウンドを確立し、さらに今年1年間を通じ、数多くのライブステージをこなすことで、みるみる人気を獲得していったuni……。

 最近のステージでオショーはパーカッションに加え、電子楽器テルミンをも操り、将来はギターを導入することすら考えているという。ひょっとしたらuniの二人は、ロックを経由しトランスを追究した末、(いまどきのロック以上に)アップ・トゥ・デイトなロックとしての「トランス」を、わたしたちに体験させてくれるかもしれない……uniのライブの魅力と可能性は、そんなことまで期待させてくれるのである。(2000/09/19、記)



U N I / U N I
PAN0001 / \2500 -
1. Sarasvati
2. pice of five
3. Sao miguel
4. Aion
5. Red resonant moon
6. Sarasvati(Ubertmer mix)
7. Sarasvati(Shakta mix)

UNI / SPOTTED MESA
PAN0002 / \1300-
1. SPOTTED MESA
2. DIVIDED LIFE
3. SPOTTED MESA -Let`s be 3rd Mix - by MASA
4. SPOTTED MESA-"宇宙賛歌"-by UBAR TMAR






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