おちゃのバックルーム(3)


聖者が町にやってきた……じゃなくて
 「ヤクザが店にやってきた」(^^;。
 「絡まれちゃったのよ、やややんやん(古いねどうも)」の話より前の話なのですが、バイト中に来はったんですわ、「ヤ」な方々が。
 もう見た目そのまま「ヤクザ」。
1.「まさかヤクザがこんなところに」と僕はつい口に出して言った。
2.「あの人ヤクザかなぁ?」と真理に聞いた。
3.「あなたヤクザですか?」と本人に聞いてみた。
……ってこれは「かまいたちの夜(チュンソフト)」じゃっ(^^;!
 3人のヤクザが店に入ってくると、一瞬にして店内に緊張が走った。いつも長々と立ち読みする学生(だと思う)や、ほろ酔い加減でやってきては立ち読み禁止なのにも関わらず、早い時間に入ってくるスポーツ新聞のHなページを見たり、店内をへらへらうろつく酔っぱらい等々……。そんな彼らが一瞬にして凍り付き、まさに「借りてきた猫」とはこんな感じなのかと思うほど小さくおとなしくなったのである。
 黒いスーツを着て、鈍く輝くバッジを付けた男、アロハシャツを着た「チンピラ」そのものな背が高く細い男と、背が高くがっちりとしてこめかみに傷のある男・・・。
 「げっ、やべぇ」
 おちゃはそう思った。なぜなら男の中でも特に力の有りそうなこめかみに傷のある男がタバコを吸っていたのだ。「店内禁煙」にご協力願うようにオーナから強く言われている。「言ったら殴られるかな」と思いながらも恐る恐る声をかける……。
 「申し訳ございません。店内禁煙になっておりますのでご協力よろしくお願いいたします」
 と言った途端、「ひっ」と雑誌売場から聞こえてくる悲鳴。

ああ!もうこの書き方は疲れるから止め(^^;。

 先に書いた、私を取り囲んだ男が、ただでさえ緊張が走っている店内で、「タバコを止めろ」等と言ったために思わず悲鳴を上げたんですね。
 その「ヤ」な人、案外気のいい人で(?)、「ん? おお、どこへ捨てりゃええ?」と聞いて、私の指示した灰皿へ捨ててくれて事なきを得ました(笑)。
 とりあえずの危機が去ると、今まで店内でたむろしていた連中は軒並み何も買わずに出ていきました(笑)。いつもは邪魔意外の何者でも無いのに、何も買わずに長居する奴らも、今日ばかりは居るだけで心強いと思ってたのにあっさり帰りやがって……貴様ら(爆笑)。
 いやぁ、そこら辺で肩を怒らせてるチンピラと違って、ホントのヤクザってのは気の小さい私には存在自体がプレッシャーです。はっきり言って怖かったです。
 その後ヤクザは店内をうろつき、酒のつまみを物色していました。すると一人が「おう兄ちゃん、酒は無いんか?」
 ひーっ、痛いところを。酒屋上がりのコンビニでないので酒とタバコの販売許可が無いため置いてないんです。これが元でで結構酔っぱらいに絡まれるんです。
 「申し訳ございません。当店では扱っておりません」やべぇ〜。怖いよほぉぉ〜。臆病な私にはこんな会話だけでも心臓ばくばく、小さなドキは今日も胸胸(死語)状態。
 「ほうかぁ(「そうかぁ」の広島弁?)どっか売っとるところ知らんか?」と予想に反して優しいお言葉。少しは気が楽に(笑)。
普@実はその頃丁度夜間に酒類の販売が禁止され始めた頃なのですが、近隣の自販機は軒並み電気だけ消して、販売を続けるというイケナイことをしてました。私は酒を飲まないので詳しくは知らなかったのですが、同じ店でバイトをしている学生がことそんなことを言っていたのでそのことを伝えると、
 「いけんのぉ(いけないなぁ)、そがあなことじゃのぅ(そんなことでは)」と言って笑いました。こっちはそれどころじゃ無いのに(笑)。
 そしていよいよクライマックス(爆笑)。
 実は私が居たコンビニは刑務所が裏手にあり(刑務所から見ればこっちが裏手)、広島で「刑務所が裏手にあるコンビニ」と言えば場所が特定できるところなのですが、「ヤ」な方々はそこへ行く道を教えとおっしゃいました。
 「店の前の道を真っ直ぐ行き、三つ目の信号を左に曲がって二つ目の交差点が刑務所の入り口です」
 とホントのことを正直に答えたところ、
 「一つ目を曲がっちゃいけん(いけない)のか?」
とおっしゃるでは有りませんか。ひ〜っ。突っ込むなよぉ。「一つ目を曲がると道が狭いから」とか、「結局出るところが同じで余計に曲がることになる」とか説明してどうにか解って貰いました。
 最後に買い物を済ませて「色々済まんかったの」と言って、スーツヤクザが一万円札を出しました。そしてお釣りを渡そうとすると、既に店外へ出る途中。「お釣りをお忘れです」と声をかけると、「小遣いじゃ」と言って帰ろうとするではありませんか。3,000円ちょっとの買い物でお釣りが6,000円ちょっと・・・軽々しく受け取れる額では有りません。
 「大したことはしてませんから」と返そうとしたのですが、「ええよ、とっとけえや(取っておけよ)」と強面の「ヤ」さんもおっしゃるので、これ以上断ると返ってご機嫌を損ねると思い(マジで怖いんだぞ)、「『24時間テレビ』の募金箱に入れさせていただきます。」と受け取りました。
 「あんたもマジメじゃのう」と笑いながら帰ったので「ありがとうございました!」と大声で叫んで、黒塗りのそれ系の車が居なくなってから・・・張りつめていた緊張の糸が緩んで大きなため息を一つ。
 「マジメじゃないよん。防犯カメラに写ってなければ貰ったんだけどね。」とようやくいつもの軽口が出ました(笑)。「ヤ」な人に言ったとおり6,000円ちょっとを募金箱にねじ込みそのまま仕事を続けました。
 その後オーナが出てきてその旨を報告し仕事を終え、またその晩出てきたら……なんと、募金箱に入れたはずの札が無い! 確かに入れたのに。 よく見ると箱の分かれる部分に貼ってある開放防止のテープが新しいものに変わっている……。これを開けられるのはオーナーのみ。小銭は入れて置くが札は……。
 オーナー……あんたって人は……。(お)

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