探求は風に乗って
登場人物紹介
名前 | 出身地 | 先天属性 | 使用武器 | 利き腕 | 身長 | 体重 | 説明 |
パック | パレポリ |
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ダガー | 右 | 164 | 54 | シータの甥。パレポリ軍に対してあまり良い感情を持っていない。未知のものへの探求心が強く、トマのような偉大な探検家になるのが夢。 |
ロビン | フィオナ神殿 | 弓 | 左 | 171 | 59 | フィオナ神殿で育てられた孤児。パックとは大の親友だが、パレポリ軍にあこがれているので、そのことでパックと口論することもしばしば。 | |
珠璃 | 不明 | 煉獄刀 | 右 | 173 | 48 | 灯台守として孤島に住んでいる謎の老人。昔はかなりの使い手だったらしく、年老いた今でも剣術やエレメントの腕は一流である。 |
序章 〜旅立ちは希望とともに〜
パレポリ郊外には古くからの歴史を持つ名家がある。かつてまだ軍事国家として発達する前は、代々村長、町長をつとめてきた家柄だ。といっても実はオレの家だったりする。世間では名門と呼ばれていて、なかでも伯父のシータ中佐は一族にとって自慢の存在だ。だからオレに対する両親の期待も大きくて嫌になる。オレは探検家になりたいのに親父達はオレを軍に入れてエリートの道を歩んで欲しいんだ。まったくいやになる。今日も出がけに母さんから引き留められる。
「パック!あんたどこいくの?」
「どこって北の森だよ。」
「また探検ごっこかい?あんたももう17になるんだからちゃんとしておくれよ。」
「オレは未知の世界を探検するんだ!パレポリに止まっているようなスケールの小さい人間になる気はないね。」
「そんなに世の中甘くないんだよ!少しはシータ伯父さんを見習いな!」
「別に軍に入ったからって偉いわけじゃないよ!トマのように探検家だって歴史に名を残せるさ!」
オレは母さんが怒鳴っているのを無視して家を飛び出し北の森へ向かった。
森にはすでにロビンが来ていた。
ロビンはオレより1つ年上で、町の剣術大会ではいつも優勝しているほどの剣の使い手だ。オレたちはいつもこの森で剣術の稽古をしている。といってもオレが教えてもらってるような感じなんだけど・・・。
「おいパック。遅いぞ。」
「ごめんごめん。また母さんとけんかしちゃってさ。」
「まったく、しょうがないなあ。」
そうこういいながら、剣術の稽古をはじめた。やっぱりロビンは強くて、まだオレには一撃を入れることさえ出来ない。
一通り稽古を終えて休憩に入ったときにロビンが話しかけてきた。
「なあ。俺がお前とこうして稽古ができるのも明日までだな。」
「うん……。」
ロビンは二日後に行われるパレポリ軍の入隊試験を受ける予定だ。軍に入った者は一般人と剣を交えてはいけないことになってるし、入隊してからしばらくは軍人寮での生活が続くから、二人で稽古が出来るのは明日で最後になる。
「ごめんな…。」
「そんな悲しい顔するなよ!ロビンならすぐに出世できるさ。」
「なあ。お前も試験受けてみないか?」
「いいって。オレが軍隊キライなのわかってるだろ。それにオレは……。」
「井の中の蛙になりたくないんだろ?」
「そう。そして世界をこの目で見て回るのさ!やっぱよくわかってくれてるね♪」
「何度も聞かされてるからなぁ。」
お互い顔を見合わせて笑う。少し時間が経って静かになってから話を切りだした。
「それでさ。オレ、ロビンの合格を祝ったら、その足で旅立とうと思うんだ。」
「例の計画か?」
「うん。」
あと一ヶ月後にトルースで武術大会が開かれる。そこには世界中から旅人が集まって、いろんな情報の交換とかも行われる。それに武術大会で上位に入賞すればお金も手に入る。まさに探検家としての旅立ちにはもってこいだ。オレはまずこの大会に出てこれからの行き先とかを決めようと思っている。
「そうか。頑張れよ!お互い精進すれば、いつかその名を聞くことも出来るだろう。」
「うん。ロビンも手柄いっぱい立ててくれよな!」
「ああ。」
こうして今日はお互い家路についた…。
【2日後】
今日はパレポリ軍の入隊試験が行われる日、そしてオレが旅立ちをする日だ。試験は朝から行われ、夕方には終了する手はずになっている。オレはそれまで出発の荷物を準備する。そして出発の時間になったら家族に見つからないようにこっそりと家を抜け出した。
数十分後、北の森に到着した。ロビンが来ていないか辺りを見回してみる。
ロビンはいた。オレに背を向けて木の切り株にうつむきながら座っている。
オレは近寄って声をかける。
「やあ、ロビン!試験お疲れさま♪」
「………」
「ロビンの次はオレの番だからね!さっそく旅立ちの用意してきたよ!」
「………」
「そんなに悲しい顔するなよ。軍に入ったってまたいつか会えるさ!」
「………」
「ねえ、ロビン?」
「………」
「どうしたのさ……。」
「………」
ロビンは下を向いたまま沈黙している。だんだん嫌な不安がオレの頭の中を支配していく…。まさか……。ロビンは……。
「井の中の蛙は俺の方だった…。」
ポツンとロビンが呟く。
「ロビン……。試験、落ちたの……?」
「ちくしょう!!町で一番の剣の使い手とか浮かれてバカみたいだっ!俺の剣術なんて全然歯が立たたなかった!!」
そう叫んでロビンは思いっきり泣いた…。
ロビンが泣いたのを見るのは初めてだった。
その涙は悔しさの涙であり、ふがいない自分に対しての怒りの涙だった…。
そんな…。ロビンは確かに強いのに…。それでも歯が立たないなんて……。
「ロビン……。」
かける言葉が見つからない。ただ重苦しい雰囲気の中、時間だけが過ぎていく。
すでに日は落ち、あたりはだんだん暗くなっていた。
しばらくしてロビンは何かを決心したように顔を上げて立ち上がった。
「パック!お前の旅に俺も連れてってくれ!俺達がこの世の中でどこまで通用するかやってみようじゃないか!」
「ロビン!そうだよ!それがいいよ!一緒にどこまでやれるか挑戦しよう!」
「ああ!まずはその武術大会だっ!」
「うん!」
そしてオレ達は旅立った!未知なる秘境を、そして自分たちの可能性を求めて…。
第一章 〜孤島の老人〜
オレ達は森を北西に抜けて海岸に出た。
「パック。ゼナンの橋を渡らないのか?」
「ゼナンの橋にはパレポリ兵がいて身分証明書を見せないといけないから…。未成年のオレ達は親の許可がないと通してくれないんだ…。」
「そうなのか。」
「だからボートでトルースの海岸まで行くんだ。」
「ボートって?そんなのあるのか?」
「うん。この計画を思いついたときから少しずつ用意しといたんだ。」
接岸してあるボートに乗り込んで岸を離れた。
「おい。やっぱり今夜は野宿して明るくなってから出発した方が良くなかったか?」
「海にもパレポリの巡視船がいるから夜の方がいいんだ。」
「巡視船?!そんなのがいるならヤバイじゃないか!捕まったらおしまいだぞ!!やっぱり軍なんだから探知レーザーとか持ってるだろうし…。」
「だいじょぶだって。このボートは自慢じゃないけどオレが作ったんだよ。レーダーに反応するような金属や難しい機械なんて一切使っちゃいないし、動力だって風任せなんだから!」
「つまりヘボいってことね。」
「うん……。だって作ったのオレだよ?そんなちゃんとしたやつ作れるわけないじゃん。もちろん木しか使ってないし、接着も木工用アロンアルファだし、ボートというよりイカダだけど……。」
ロビンの冷たいまなざし…。
「でっ、でも大丈夫!木だけだからレーダーに引っかかる心配は無いから♪」
「でもレーダーとか言う前に沈まない?」
「え……?」
ザッパアァァーーン
突然高波がボートを襲い案の定ボート(イカダ)はバラバラ。パック達は海に投げ出され意識を失った……。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
「んっ……………」
「目を覚ましたかの?」
「え…?」
だんだん意識がはっきりしてくる。どこかの部屋の中で寝かされているようだ。一人の老人がお茶を差し出した。
「これでも飲んであったまるがええ。」
お茶を受け取って飲み始める。
「よお。お前も目を覚ましたのか。」
横からロビンが話しかけてきた。
「ロビン?先に起きてたのか?」
「ああ。」
「いったいここは?オレ達はどうなったんだ?」
「難破して岸に打ち上げられた俺達をここの灯台守の珠璃さんが助けてくれたんだ。」
「灯台守?ここは灯台なのか?」
「ああ。」
「ってことはもう北の大陸についたってことか?」
「いや、ここはわししか住んでいない無人島じゃぞ」
珠璃と呼ばれた老人が答えた。
「お前さんたちは北の大陸へ行きたいのかい?」
「トルースの武術大会に参加する予定なんです。」
「武術大会とな?6ヶ月前に行くとは用意が早いのう。」
「6ヶ月前?1ヶ月前じゃないんですか?」
「今年から冬に行われることになったんじゃ。知らんかったのか?」
「おいパック!これはどういうことだ?」
「えっ?……。じいさん、さっきの話は本当かい?」
「そうじゃとも。どうしたんじゃ?間違えていたんか?」
「うん。1ヶ月後だと思ってた……。」
「それは災難じゃのう。といってもお前さんたち、武術大会で勝てるほど強いのかい?」
「わからない。わからないから自分たちの強さを確かめに行くんだ。」
「正直、私もそこが不安なんです。いったい大会に出る人たちはどの程度の強さなのでしょうか?」
「そうじゃのう…。少なくともエレメントを数種類は使いこなせるぐらいでなけゃムリじゃのう。お前さんがたはどのくらい使いこなせるんじゃ?」
「エレメント?そういえばエレメントなんて使ったことないなあ…。なあ、ロビン?」
「ああ。珠璃さん、私たちはエレメントを使えません。」
「1つもか?」
「はい。」
「じいさんはどんくらい使えるんだ?」
「わしか?わしはもう老いてるからなんともいえんが十数種類くらいは使えるぞい。」
それを聞いてオレとロビンは顔を見合わせてニヤっとした。6ヶ月の時間、エレメントの修得、生活場所の確保・・・それらの問題を解決する方法が見つかったのだ。
「珠璃さん。今から6ヶ月の間、私たちにエレメントの特訓をしていただけないでしょうか?」
「ええぞい。」
「本当かい?」
「ああ。」
いきなりOKされて、拍子抜けた。
「ただし条件があるぞい。」
「?」
「この灯台の5階より上、そして地下には絶対に入らないこと。それさえ守れるなら特訓してやるぞい。」
オレ達はお互いを見合った。別にそんなことなら問題ない。そりゃあ入るなと言われれば多少気になるが、とりあえず今は強くなることが先決だ。
オレ達は条件をのむことにした。
「わかった。そこには行かないよ。」
「よし。ではまずお前さんたちの現在の力を把握しておきたいのう。ちょっちついてこい。」
じいさんについて行くと、そこにはパンチングマシーンのような機械と、両手を乗せるようなガラス状の台座があった。
「これは物理攻撃と魔法力を測定する機械じゃ。さあ、一人ずつやってみるがええ。こっちの機械は思いっきり殴るんじゃ。こっちはこの台に手を乗せて集中すればええ。」
オレ達は進み出てその機械に近寄った。
「なあ、ロビン。ちょっとおもしろそうだな。」
「ああ。でもこれって入隊試験のときのやつと似てるな…。」
「パレポリの入隊試験でもこんなのやらされたん?」
「ああ。俺は54と26だった。」
「ふーん。」
オレは思いっきりパンチングマシンを殴ってみた。出てきた数値は45。次に魔法力の方もやってみたが、数値は14だった。
隣ではロビンがやり終えて、55と26だった。
「ほうほう、まずまずそんなもんかのう…。おまえさん…、パックといったかいのう…、パックはまだまだロビンには届かんのう。」
「ふん。じゃあじいさんがやってみせてくれよ。」
「わしか?わしは歳じゃから昔のようにはいかんじゃろうが……、まあええじゃろ。やってみるか…。」
バシィッ!!
ズオォォォォォォォォンンン……
二つをやり終えて、その数値が出るのを待つ。
「うっひゃー!!350と458だって!!すげえ!!」
隣ではロビンがあっけにとられてる。
「ふむ。まあ、こんなもんじゃろ。」
「ホントにすげえな。全然筋肉なんてついてなさそうなのに……。」
「攻撃力は筋肉だけじゃない。タイミングや速度やいろんな要素が組み合わさって高まるものじゃ。」
「すごいです。感動しました。これからの指導よろしくお願いします!!!」
こうしてオレ達二人はじいさんのもとで修行を始めた・・・・・・
【6ヶ月後】
オレとロビンは2,3種類のエレメントを修得することに成功し、師匠との戦闘訓練のおかげで肉弾戦にも強くなった。
特にオレはダガーを使った戦闘が上手くなり、今ではロビンさえ負かしてしまうほどだ……。
「よし、今日の訓練はこれぐらいにしとこうかのう。最後に二人の現在値を測ってみるがええで。」
「はいっ!師匠!」
二人同時に返事をし、一人ずつ例のマシーンで物理攻撃と魔法力を計測する。
オレは128/54、ロビンは103/83だった。
訓練を終了して居間でいつも通りお茶を勧められる。
「さあ、暖かいお茶でも飲んで体を休めるがええ。」
オレ達はお茶をすする……。
他愛のない話をしているうちに窓の外は暗くなり、眠気が頭をもたげてきた。
隣を見るとロビンは椅子にもたれ掛かりながらすでに眠っている…。
オレも暖炉のパチパチという木が燃ゆる音を聞きながら眠りの縁へと誘われていった………
………
………………
ザザァァァァァァァン
……………
ザザァァァァァァァン
……
「…ん」
波の音が聞こえる……
まどろみの中から目を覚ますとそこは海岸の砂浜だった……
なにがなんだかわからず辺りを見回す……
「ん?」
ベルトに一通の封筒が挟まれていた。
封筒を開けてみる……
中には数週間は暮らしていけるほどのお金が入っていた。
おそらく、師匠が入れてくれたものだろうが、手紙は入っていない……
それに、別れの挨拶もせずにいきなりこんな海岸に置き去りにされるとは……
ことの顛末が把握できず、とりあえずロビンを起こす。
「おい、ロビン、起きろよ!」
「んん?何?………ここ、どこ?灯台じゃないの?」
「わかんないよ。起きたらいきなりこんなところに置き去りにされてた……。でもあの島じゃないことは確かだよ。向こうに町並みが見えるし……。」
「じゃあ、ここはもう北の大陸なのか?」
「たぶんね。でもオレ達が寝てる間に師匠が連れてきたらしいよ。」
「で、師匠は?」
「いや、どこにもいないんだけど……。たぶん、もう島に帰っちゃったんじゃないのかな……。」
「なに?じゃあ師匠は俺達を捨てたのか?」
「う〜ん、でもお金持たせてくれてるんだよね。しかもけっこう高額♪ なんでだろ?でも見捨てられたって訳じゃなさそうだよ。」
「じゃあ何で俺達が寝てる間にここまで運んだんだろう……?」
「そうなんだよね。それが問題なんだよ。」
「俺達を見捨ててないってことは、ここまで連れてくるのに寝てもらってなくちゃいけなかったってことだろ?」
「なにか見られたらいけないものでもあったのかな……?」
「でもあの島のことは例の出入り禁止の場所以外はほとんど全部知ってるよな……。」
「じゃあここに来るまでの道順を知られたくなかったとか?」
「…………、そうかも知れないなぁ……」
「そういえば、オレ達、難破して辿り着いたんだからあの島の場所知らないよね。」
「ああ……。そもそも、俺達は南大陸からトルースがある北へ向かったんだろ……。ゼナン大陸の近海に無人島なんてなかったよな……。」
「じゃあ、まだ誰にも知られてない島とか……」
「それなら何で灯台があるんだよ。灯台があるってことは公海航路として利用されてるってことで…………」
ロビンは言いかけて気付いたようだ…。オレもそれに気付く…。
灯台があるってことはたくさんの労働者を使って灯台を建てたということで、師匠が灯台守としているってことは何かの役割を担っているってことだ……。
「確か師匠、ここは無人島だって行ってたよな……?」
「ああ。灯台がある時点でおかしいのに、全然気付かなかったな……。」
「それに立入禁止の場所は怪しかったし……。」
…………
いろいろ話し合ってみたがけっきょく結論を出すことは出来なかった…。
どちらにしろ強くなることができたんだし、今の目的は武術大会に出ることだったので、深く考えることはせずにトルースの街へと向かった……。
【トルース】
街の中は今まで見たことがないほど活気立っていた。
武術大会が近いせいか、お祭り状態で出店が多く出ている。俺とロビンも和やかな気分で大通りを歩く。
皆が楽しく騒いでいる中で刺すような視線で俺達を見つめてくる男がいた。
その男は手に持っていたタバコを捨て、足で踏みつけて火を消すと、俺達にゆっくりと近づいてきた
「お前ら、武術大会に出るんだろ?」
「だったらどうだっていうんだ」
「出るのやめろ」
「はあ?」
「でるのやめて俺についてこい!」
「なにいってんだよ!なんで見ず知らずのお前についていかないないといけないんだ?」
「お前らからは特殊な臭いがする。」
「は?なんにも香水なんてつけてないぞ。」
「そうじゃねえ!お前ら自信はたいして強くなさそうだが、お前らには超弩級の力を持ったヤツの臭いがついてるっていってるんだ。」
「・・・・。」
オレとロビンはしばらく考えていた・・・。
「師匠の事かな?」
「師匠?誰だそいつは?」
「私たちが戦闘を習った師匠です。珠璃という老人ですが・・・。」
オレが答える前にロビンが答えた。
「老人か・・・。そいつの力はどのくらいなんだ?」
「たしか350/458でした。」
「う〜ん、そいつじゃなさそうだなぁ・・・。もっとケタ違いの化け物みたいなヤツに会ってないか?」
「いえ、師匠が今まであった中では一番強い方ですが・・・。」
「まあいいや、とにかくお前らからは特殊な気を感じるしな。どうだ?一緒にこないか?」
「だめだ。オレ達は武術大会に出るんだ。」
「ふ〜ん。」
その男はジロジロと品定めでもするかのようにオレ達を見た。
「お前らだとせいぜいベスト16くらいまでだろうなぁ。」
その言葉にカチンときた。
「ベスト16?じゃあお前はどれくらいなんだよ!」
「まあ俺のことはおいといてさぁ。お前らは攻撃力と魔法力足した総合で200前後ってところだろ?どーせ優勝できねえんだからさぁ。」
「別に優勝するのが目的じゃない。これからの旅資金と修行のためだ。」
「修行のためねぇ。旅の資金くらいなら俺と一緒に来れば全部だしてやるよ。」
「でも3位までに入れば賞金をもらえるんだからな。お前に世話になる必要もないぜ。」
「おいおい。3位に入れるわけねえだろ。200前後くらいの戦闘能力でさあ。」
「3位にはいるには大体の目安としてどれくらいの戦闘力と魔法力が必要なのですか?」
「まあ例年からいうと450以上は必要だなぁ。ちなみに去年の優勝者は350/140って話しだぞ。」
「・・・・・・。」
「おいおい、ロビン。なに暗くなってんだよ。俺達は挑戦者なんだ!がんばろうぜ!」
「ああ。」
「挑戦者ってか♪いいねえ。気に入ったぜ!やっぱ俺と一緒に来いよ。もしお前らが3位以内に入れなくて金がもらえなかったらでいいからよお。」
しばしばロビンと話し合った結果、男の提案を受け入れることにした。
「わかった。どうせ俺達も金を稼ぐような目処はついてない状態だったんだ。食費や旅費を出してくれるってんならついていってやるぜ。」
「よしっ♪交渉成立だな。じゃ、お互い武術大会頑張ろうぜ♪」
「ああ。」
「そういえばお前ら宿泊先とか決まってんのか?金だしてやろっか♪」
「必要ないよ。これでも少しくらいの金は持ってるんだからな。」
「わかった。じゃあまた武術大会でな。」
男は背中越しに手を振って去っていった。
その日はしばらく縁日気分の町中を散歩したあと宿屋に戻り床についた。
それから武術大会までは最後の仕上げとして二人で実践的な組み手をした・・・。
つづく
次回予告:ついに武術大会が開催される・・・