宵闇の十字星

　

登場人物紹介

名前 出身地 先天属性 使用武器 利き腕 身長 体重 説明
ゲーリング元帥 パレポリ

ドラゴンスレイヤー 右 １８５ ６８ パレポリ軍第１師団長。その臨機応変な判断力は適切かつ迅速で部下からの信頼も厚い。個人的実力もかなりのもの。
クライスト元帥 パレポリ
龍槍ゲイボルク 右 １９２ ６４ シュッツシュタッフェルの司令官。ゲーリングと同期で、ライバルでもあり親友でもある間柄。
シーラッハ中将 トルース
槍 右 １７２ ５２ 第１師団統制官。なんでもこなすオールラウンドな男。ゲーリングを尊敬し、その補佐に全力を注いでいる。
ゲッベルス上級大将 不明
ナハトシュベルト 左 １８３ ５６ パレポリ軍参謀総長。事実上、パレポリの軍略を掌握している。その実力はエレメント無しで魔法を操るほど。謎の多い男。
ルーデンドルフ国家元帥 不明
なし
 エクスカリバー 両手 ２１７ ７１ パレポリ軍の最高総司令官。エレメントの先天属性を持たず、全ての属性を使いこなす最高位クラスの魔法騎士。
ソイガー魔王 メディーナ
ソイソー刀 両手 １９０ ７２ メディーナ大陸の魔王。ビネガーの子供でソイソーから剣技を習った。
シャクス 魔界
不明
 不明 両手 ２１０ ５９ ソイガー率いる魔王軍の幕僚長。数年前突如として現れ、その並はずれた魔力で魔王軍のＮｏ２にまで登りつめた。

【ゼナン大陸：軍事総本部】

パレポリの中枢部の中でも特に中枢にあるのが軍事総本部である。パレポリ城よりも重要な建物であり、国の中央に位置しているその建物には、パレポリ軍の全てのデータが保管されている。特にその中の最高総司令部は国の心臓部だ。その警備も厳しく、常時数千の軍人が警備に当たっており、ネズミ一匹通さないほどの厳戒態勢である。

その中を一台の高級車が走っていく。

正門から堂々と入って行くが、はたして衛兵に止められた。

その車には２人しか乗っていなかった。衛兵は運転手の後ろに座っている男を一瞥すると、

「お前は何者だ！身分証明書を見せろ！」

と言い放った。

後ろの男は沈黙したままだ…。

「おいどうした！早く身分証明書を出さないか！！」

男は答えず、代わりに運転手が答える。

「この御方は第１師団長のゲーリング元帥だ！言葉を慎め！」

次の瞬間、衛兵の顔が蒼白になる。その額からは汗が流れ出し、体が小刻みに震えている。

「失礼いたしました！！どうかお許し下さい！！」

衛兵は深々と頭を下げ謝罪した。

「車を出せ」

「はっ！」

車は本部内に入っていき、地下２階の駐車場に止まった。警備兵が車のドアを開けゲーリングをエスコートする。

ゲーリングは幹部専用の直通エレベーターに乗って最上階の１００階で降りた。

そのまま彼は真っ直ぐ進み、最高総司令室に入っていく。部屋の中には一人の姿しかなかった。

「よお。久しぶりだな。何の用だ？」

「クライストか…。ちょっと確かめたいことがあってな……。ところでそっちの調子はどうだ？」

「相変わらず待機中さ。シュッツシュタッフェルは余程のことがない限り出動できないからな。」

「最高総司令官は？」

「例の海底遺跡に行ってる。」

「シュッツシュタッフェルの護衛なしでか？」

「そうだ。シュッツシュタッフェルどころか、一人も護衛がついていない。」

「ゲッベルスは？」

「奴も海底遺跡に行ったらしい。だから今は参謀本部もからっぽさ。」

「おかしいな……。」

「やっぱりお前もそう思うか？国の頂点に立つ二人が同時に首都を離れるなんて前代未聞のことだ。」

「そこまでして海底遺跡に固執する理由は何だ？」

「それがわかりゃ苦労しないよ。だが、例の伝説と関連があるんじゃないかな。といっても俺の予想でしかないけどな。」

「それって、伝説の魔法王国のことか？」

「ああ。」

「おとぎ話だろ。」

「まあな。こんなこと話しても誰も信じてくれないだろうな。」

「でもちょっと不可解なことがあるんだ…。」

「なんだ？」

「今回の作戦では魔族の生け捕りが指令されたんだ。」

「生け捕り？」

「ああ。それも魔王と幹部は全員だぞ。」

「それはすごいな…。魔族は遺跡のことを知ってるとかかな？」

「たぶんそうだと思う…。が、なんともいえん。」

「とにかく捨てておけないな。確かめてみるか？」

「といっても海底遺跡に行くわけにはいけないだろ。お前まで首都を離れたら……。」

「副隊長に任せればいいさ。お前も統制官に任せてきたんだろ？」

「まあな……。」

「行ってみないか？俺は昔からゲッベルスはどうも信用できないんだ。」

「ナハトクロイツか？」

「ああ。確かにゲッベルスは無敵の強さを誇ってるし、その策略も最高峰だ。今まで奴が立てた作戦はことごとく成功している。だが、謎が多すぎる。奴の素性さえ謎なのに、ナハトクロイツを組織して謎の行動をしている。ヤツらは暗殺以外にも何かやってそうだ……。」

「同感だ。総司令官は２ヶ月前から連絡が取れない状態だ。もしゲッベルスが良からぬことを企んでいるなら俺達が正さないといけない。」

「だが、どうやってそれを知る？」

「俺が捕らえた魔族から聞き出せばいい。」

「今、魔王はどこにいるんだ？」

「わからない。捕らえた後、参謀本部へ身柄を引き渡したから参謀本部へ行けばわかるだろう。」

こうして意気投合した私達は先日捕らえた魔王の居場所を聞き出すために参謀本部へ向かった。

　

【参謀本部】

軍事総本部を出て南へ歩いていくと数分で参謀本部に到着する。さっそく参謀本部のナンバー２を呼び出す。元帥が２人もそろっているせいか、参謀本部側も緊張し、丁重な扱いで部屋に通された。そこにはナンバー２のキュヒラーが敬礼をして立っている。

「私は参謀本部のキュヒラーでございます。ゲーリング元帥にクライスト元帥、参謀本部には何の御用で参られたのでしょうか？」

「キュヒラー中将、先日我が第１師団が引き渡した魔王の居場所を教えてもらいたい。」

「はっ！しかしそれはゲッベルス様から口外禁止の命を受けておりまして…、たとえ貴方様方といえどもお教えするわけには……」

クライストが前に詰め寄る

「教えてもらおうか。上官である我々の命令は絶対だ。もしそれでも断るのなら死刑を適用することも可能だ…。」

「どうか御了承下さい。もしここでお教えしてしまったらゲッベルス様に死刑にされてしまいます……。」

キュヒラーは当惑していてその額からは汗が滲み出ている……。無理もない。上官からの命令の挟み撃ちにあい、究極の選択を迫られているのだ。

「クライスト、もうやめておこう。中将の立場も理解してやれ。」

「……。ああ、わかった。」

「ところで中将、魔王は流刑植民地の灯台監獄に幽閉されているのだな？」

「先程申し上げたように、申し訳ありませんがそのような質問には答えることができかねます。」

参謀本部のナンバー２だけあって口は達者だ…。だが我々の方が一枚上手だった。質問されたときの心拍の乱れを漏らさず察知していた。

「わかった。もう何も質問するまい……。御苦労だったな。我々は引き揚げることにしよう…。」

二人は参謀本部から引き揚げた。だがキュヒラーの雰囲気から流刑植民地に魔王がいることを察知し、流刑植民地とされている移動島に向かう。

　

【移動島：灯台監獄】

移動島とは文字通り、移動する島であり、パレポリの流刑植民地として利用されている。流刑植民地とは犯罪人を強制輸送する場所のことだ。中でも灯台監獄には政治的重要人が閉じこめられており、今までのパレポリの戦争にて捕らえられた敵の上級幹部、パレポリの政争に敗れた人々、旧ガルディア王国の王族などもその中に含まれている。監獄されている者の情報は一切非公開であり、それらの者は世間的にはすでに死んでいることになっている。この島もたえず移動しており、地図上には記載されていない。パレポリでも国の上層部しか知らない島である。しかもこの移動島は参謀本部の管理下にあるのだ……。ゲッベルスのことだから、二人がここへ来るのを予想し、何らかの手を打っているかもしれない……。そんな不安を抱きながら、二人は島に上陸した……。

　

つづく

次回予告：上陸した二人は謎の老人と出会う・・・