A校に行っていたとき、人材開発担当の人が何度も言っていた。
「とにかく資格!CG関係は、CG検定とマルチメディア検定、画像処理検定を 持っていれば就職に有利」
A校での模擬試験もいい成績だったので、私はZ市でCG検定とマルチメディア 検定を受験することにした。東京在住だったら、A校も会場となっていたので
学校の皆と一緒に受験できたのだが、仕方がない。
受験申込の冊子が面白い。まるで、怪しいペンダントやキーホルダーの広告の様に、
「この資格をとって、私はこんなに役に立ちました!」
「転職できました!」
「業務で役立ち昇進しました!」
など、顔写真とコメントが載っている。 ペンダントやキーホルダーの広告と同じように、鵜呑みにしてはいけないと思うが、経験もない 人脈もない転職希望者としては、こういう謳い文句に、ついフラフラとしてしまうのだろう。
申し込んだときはまだ就職が決まっておらず、私もすくなからず そういった気持ちがあったかもしれない。
受験日は、就職して一月ほどたったころだったと思う。
A校で使っていた教科書を復習し、時間に余裕をもって会場へ。 しかし、いくら探しても受験の教室はみあたらない。 しばらくして、会場の電子系専門学校、K校を別の専門学校と勘違いしていた
ことがわかる。
あわててK校に向かい、机についたときは 試験開始から15分経っていた。
幸いにも、SEをやっていた知識と、仕事で使い始めた3DCGソフトの知識が 役に立ち、遅れていっても余裕だった。
昼休みに入ると、周りの若者達は友達同志が多いのか、仲良く談笑していた。 どうも受験しているのは、ほとんどがK校の生徒のようだ。教室の掲示などを見て喋っていた。
午後の試験が始まる。 ここからだ、生徒達がうるさくなってきたのは。
併願の関係上、(CG+マルチメディア、CGのみ、CG+画像処理、など、) 同じ階の違う教室では、別の科目が行われ、試験終了時間もまちまちだった。
すると、自分たちより先に試験が終わった若者たちが、廊下に出て友達たちと 喋る、笑う、叫ぶ、
…な、なにこれ。 ほかの教室では試験やってるの、わからないの?
私は大丈夫だったが、 この騒音で イライラして、問題が手に付かなくなった人もいたのではないだろうか。
そのうち、
ガラガラ…
「うるさいっ!!!静かにしろ!他の教室は試験中だっっ!
試験がおわったら静かにしているか別な場所に行きなさい!」
試験官をやっていたと思われる、K校の先生の怒号が廊下に響いた。
口調からして、やはり、騒いでいた連中はK校の生徒のようだ。 先生に怒鳴られ、一瞬静まる廊下。
しかし、しばらくすると、ふたたびガヤガヤ し始め、とうとう治まることはなかった。
なんだか見覚えのある光景…そうだ、まるで、全校集会をする中学生だ。 先生の言うことをきかず、がやがや、うるさくって、大声で注意され…
この生徒達、二十くらいのはずなのに、まだ中学生レベル?
こんな人たちが受験するような資格が、転職に有利な資格だなんて、 ちょっと信じられない。
後日、合格通知が来たが、CG関係の試験ってこの程度のものなのだろうか。
日本人は肩書きに弱い。履歴書に書く項目が増えたのは、喜ぶべきなのだろう。
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