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時事フランス語(第20号)
(1998年9月28日発行)
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レベル:★★★★

今回から数回に分けて、遺伝子組替え食物についてのLE MONDE
DIPLOMATIQUE - MAI 1998の記事を読みましょう。少し難しい文章ですが、幸い
と斎藤かぐみさんのサイトで翻訳をよめるので、原文と翻訳をダウンロードして、比較し
ながら読んでくださいね(優れた翻訳を掲載してくださっている斎藤さんに感謝します)。

原文は次の場所にあります。
●Faut-il avoir peur des aliments transgeniques ?
http://www.monde-diplomatique.fr/md/1998/05/BENOIT_BROWAEYS/10479.html
斎藤さんのサイトは次の場所です。便利なリンク集もあるので、ぜひのぞいてみてくださ
い。有料ですが、日本語で配信してくれるようですよ。
●ル・モンド・ディプロマティーク
http://www.netlaputa.ne.jp/~kagumi/index.html
翻訳は、次の場所にあります。
●遺伝子組換え作物の何が危ないか
http://www.netlaputa.ne.jp/~kagumi/9805-2.html


POUVOIR DES FIRMES AGROCHIMIQUES

Faut-il avoir peur des aliments transgeniques ?

SI les plantes genetiquement modifiees couvrent d'ores et deja
32 millions d'hectares aux Etats-Unis, les Europeens, pour leur part,
rechignent a ≪ cultiver et manger transgenique ≫. Pourtant, pour la
premiere fois en Europe, le gouvernement francais a autorise, le 27
novembre 1997, la mise en culture d'une variete de mais manipule, et ce
sans le moindre debat sur les dimensions politiques et ethiques de ce ≪
remodelage du vivant ≫.
●les plantes genetiquement modifieesは、遺伝子組換え植物ですね。タイトルの
des aliments transgeniquesも同じような意味で、こちらは遺伝子組換え作物と訳されてい
ますね。rechignerはいやがる、渋い顔をするというあまり使われない動詞です。この
文章はSiで始まりますが、仮定の文章ではなく、現実にアメリカでは3200万ヘクター
ルで植え付けが行われていることに注意。こういうレトリカルなSiはフランス語ではよく
使われます。
●et ce sans le moindre debat は、しかも、それがいかなる議論もなしに。この
moindreはいささかのという意味です。sans la moindre explicationというと、説
明もなしに。論者はその決定が論議なしに行われたことの問題性を強調するために、こ
の動詞を省いた表現を使っています。

En particulier, est-il admissible que les ressources vegetales soient
monopolisees par des depots de brevets et exploitees par quelques-uns ?
Rejetant le productivisme agricole, la standardisation des aliments et
l'asservissement aux agrofournisseurs, les citoyens sont en droit d'exiger
que les bio-industries servent prioritairement les besoins des producteurs
et des consommateurs.
●est-il admissible queもレトリカルな疑問文です。許すことができるだろうかと問うこ
とは、許せないと断言するよりも、読者に強く訴えかけますね。depots de brevets は
特許の記録簿の意味で使われています。次の文の主語は市民ですね。市民は最初に
列挙された三つの営みを拒否し、バイオ産業が、消費者と生産者のニーズを優先するこ
とを求める権利がある(etre en droit de + inf:する権利がある)とされています。市民
が拒否することを求めるのは、次の三つです。すなわち農業において生産だけを優先す
ること、食物を標準化すること、農産物供給企業の支配に従属すること。ここでは
agrofournisseursはバイオ産業を言い換えたもので、フランスの農業の土台である小
規模な生産者des producteursと対立するものとして捉えられていることに注意が必
要ですね。

Maudits par les uns, sollicites par les autres, les aliments
transgeniques, tels que les tomates, le mais et le soja genetiquement
modifies, declenchent, depuis leur autorisation a la consommation en
Europe (fevrier 1996 pour le soja de la firme americaine Monsanto, et
decembre 1996 pour le mais de Novartis), une rebellion multiforme.
●Maudits par les uns, sollicites par les autres,は、嫌悪する人もいれば、強く求める人もいるという程度の意味で、翻訳では激しい賛否両論の対象となりと適切に訳
されています。フランス人の好きな対位法的な表現。genetiquement modifiesは遺
伝子組替えのことを言い換えた表現ですね。日本語だと同じ訳語になってしまいますが、
フランス語はいつも少しずつ言い換えるようにした方がスマート。declencherは何かが
きっかけとなって大きな出来事が始まるときによく使う表現。英語ではtrigger、日本語
では引き金となるという言葉のイメージに近いです。une rebellionは言葉の意味は
反乱ですが、翻訳のように反対運動という方が適切でしょう。

Il semble, en particulier, inacceptable que les interets financiers de
quelques geants industriels privent les citoyens du droit de decider non
seulement des precautions a prendre en matiere de manipulations
genetiques, mais aussi du contenu de leur alimentation et des formes de
leur agriculture (1).
●priver qn de は、誰かから何かを奪う。市民が奪われるものが、non seulement...
mais aussiで列挙されていますね。ここで翻訳はとりわけ認めがたく思われるのは、
遺伝子操作についてばかりか、食品の中身や農業の方式についても、何を用心すべき
かを決める権利が、一部の大企業の利潤追求のために一般市民から奪われる点であ
としています。もちろんこういう読み方もあるでしょうが、農業の方式についてなにを
用心すべきかと考えると、少し分かりにくいですね。non seulement.... mais aussi
の構造から判断して、des precautions aは遺伝子操作に対する警戒だけを意味す
るとぼくは読みます。mais aussi以下は素直に、du droit de decideにかかると
読むと、市民たちが奪われるもう一つのものは、何を用心するかを決める権利ではな
く、自分たちが食べる食品の内容と、自分たちの農業の形式について決定する権利だと
いうことになります。ただ、これは細かなことで、全体の翻訳の質はとても優れていると思います。

Des 1980, MM. Francois Gros, professeur au College de France, et Francois
Jacob, Prix Nobel, lancaient une mise en garde : ≪ D'ici a l'an 2000, il ne
restera vraisemblablement que certaines nations pour controler
l'ensemble des ressources genetiques et assurer leur valorisation et leur
exploitation commerciale a travers un petit nombre de varietes ameliorees
(2). ≫
●lancer mise en gardeの意味は翻訳とおりでいいですね。ここではmettre /mise
がさまざまな使い道をもっていることを確認しておきましょう。
mise du pointは、説明する、釈明する、開発するなどの意味を表現できます。
mise en oeuvreは実施する。
mise en sceneは映画や舞台でよくでてくる演出ですね。
mise sur piedは準備、組織などの意味になります。
このmettreという動詞のイディオムを名詞にしたmise周りの表現は、説明とか実施と
かの本来の動詞や名詞を使わずに言い換えることができるので、使いようによってはと
ても便利ですし、逆になれておかないと戸惑う表現です。こうした表現が使われるのも、
同じ表現を使うのを避けて、少しずつ言い換えるフランス語の癖ですね。

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