□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
時事フランス語(第30号)
(1998年10月31日発行)
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
人間の顔の一部を使ったイディオム(locution)の解答です。まず問題文とその答から。

(1) Dormir en toute tranquillite, c'est dormir sur ses deux oreilles.
(2) Regarder quelqu'un avec des yeux pleins de sentiment, c'est le faire
les yeux doux.
(3) Un plat qui fait tres envie est un plat qui fait venir l'eau a la bouche.
(4) Ne pas avoir l'air en forme, avoir l'air sombre, c'est faire triste figure.
(5) Admettre, reconnaitre, autoriser quelque chose avec reserve, c'est le
faire du bout des levres.
(6) Refuser absolument de parler, c'est ne pas desserrer les dents.
(7) Refuser d'entendre quelque chose, c'est faire la sourde oreille.
(8) Dire toujours du mal des gens, c'est etre une mauvaise langue.
(9) Resister, n'agir, n'intervenir qu'apres de multiples pressions ou
interventions, c'est se faire tirer l'oreille.
(10) Se mettre tres rapidement en colere, c'est avoir la moutarde qui
monte au nez.

フランス語の言い回しでも、これまでの動物の表現と違って、人間の顔の造作を使う表
現では、かなり日本語と似ているところもありますね。順にみていましょう。
(1) はなかなかユニーク。二つの耳を下にしては眠れないものですが。この反対の言い
回しは、一つの耳を下にして寝るだとお思いでしょ? ところがne dormir que d'un
?il (=dormir legerement, en etant pret a reveiller)なのですね。どうもゴル
ゴンのようですが。要するに知覚の器官が二つともにしているか、一つだけかと
いう違いです。unとoreille、deuxとyeuxの組み合わせの表現はありません。
(2)これは日本語にそのまま訳しても意味が通じそう。やさしい目でみる。媚びという
言葉とちょっと近いかも。
(3)このl'eauは当然唾ですね。唾が出るというよりは、日本語ではよだれが出るという
と思いますが、ほぼ同じですね。唾はなぜか梅干しをみたときにいう....。
(4)これもほぼ直訳で通ります。おまえ、なにを悲しそうな顔をしてるんださえない
面だぜ。有名な小説の人物に、世の中を悲観したような悲しげな人物がいました。
Chevalier a la Triste Figure:ドン・キホーテのことですね。
(5)しぶしぶと、avec reticenceで認めたり、許すことをいうのに、この舌の表現を使う
のは、少し変わっているようにおもえますが、よく考えてみると、日本語にも同じような表
現があります。舌の先boutは、心の底fondに対立していて、心と舌についての古くか
らの対比がここで暗黙のうちに働いていると考えることができます。日本語でも、心の
底から舌先三寸という言い方をしますね。
(6)これは表現としてはよくわかりますね。歯をゆるめるdesserrerことを拒めば、舌は
出てこないし、言葉も出てこないと考えることができますから。
(7)耳を貸さないというのが、普通の日本語の表現でしょうね。フランス語でもpreter
l'oreilleと同じ表現をします。さらにフランス語では、耳がつんぼ(いわゆる差別語です。
使うときには御用心)になったといいます。これもよく分かる.....。
(8)これと同じような表現が動物編ででてきましたね。たしかまむしが比喩に使われて
いたはず。
(9)日本では子供を無理矢理動かすときに、耳を引っ張るというのはあまり見かけませ
んが、ヨーロッパではかなり普通なのかな。日本語だと鼻の表現を使いますね。
(10)moutard(からし)が鼻にくるというのは、日本語だとワサビがつんとくるという感じ
でしょうけど、その速さがむかっ腹を立てる速さと同じという感じでしょうか。からしの辛さ
の抵抗できなさと、怒りの抵抗できなさが類比されています。怒りがほとんど生理的な反
応として現れる場合ですね。同じような生理的な表現として、le sang lui monte au
visage (怒りなどで顔が真っ赤になる)という表現があります。この怒りの表現と同じ
ぼるという表現を、日本語の頭に血が上るという表現と結び付けてみると、その内的
な連関が見えてきますね。

今回は、日本語の慣用表現とフランス語の慣用表現の不思議なつながりについて考え
てみました。

=========================================
リッチテキスト・ファイルについて。
ホームページには、このメールがRTFファイルでリンクされています。
このファイルは、WindowsをOSにしておられる方なら、だれでもアクサンつきで読む
ことができるはずです。
「スタート」から「プログラム」を選んで、「アクセサリ」を選択すると、その中にワードパッ
ドのプログラムがあるはずです。ファイルをダウンロードした後で、開くのところでファ
イルの種類をリッチテキスト形式(.rtf)にしてください。するとダウンロードしたファイル
が文字化けなしに開けるはずです。
ぜひアクサンつきの文をお読みください。


●姉妹メールマガジン『映画で学ぶフランス語』はまぐまぐでお申し込みいただけます。
IDは0000006665です。

●フランス語を学ぶ人と使う人のネットワークフランス語ネットワークメーリングリスト
は、メンバーの数が100人を越えました。毎日楽しくメールのやり取りをしています。ワ
イワイ、ガヤガヤといろいろなテーマで話しましょう!!。お申し込み方法は
https://members.tripod.com/~terra_3/ml.htmlまたは
http://www.geocities.com/Paris/6257/ml.html
をご覧ください。

● お便りコーナーへのメールはterra@cyberdude.comへどうぞ。
それ以外のメールはterada@cheerful.comにお願いします。
気が向いたら、映画のことでもワインのことでも、お気軽にterada@cheerful.comにメ
ールしてください。いろいろおしゃべりしましよう。

On s'e-mail?

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
時事フランス語第30号 [1156部]
寺田 駿 official:terra@cyberdude.com
private:terada@cheerful.com
ホームページ: https://members.tripod.com/~terra_3/
http://www.geocities.com/Paris/6257/
配信: まぐまぐ(http://www.mag2.com/ )
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
『時事フランス語』と『映画で学ぶフランス語』をホームページで購読および購読取り消し
を行えるようにしました。索引のページの一番したのカラムに、アドレスを入力してくださ
いね。