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時事フランス語(第32号)
(1998年11月9日発行)
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今回は教育とコンピュータの第二回目です。まず課題文の最初のパラグラフからみてみ
ましょう。

Avant de se lancer - a son corps defendant - dans l'education sexuelle de la
planete via Internet, Bill Clinton etait deja un ardent avocat des vertus
pedagogiques de l'ordinateur. Des 1993, il met en place, avec son vice-
president Al Gore, une ≪ Task force ≫ pour developper les autoroutes de
l'information. Objectif : connecter toutes les ecoles au web d'ici l'an 2000.
A la cle, un programme national d'informatisation des ecoles qui doit
rendre l'ordinateur ≪ aussi habituel dans la salle de classe que le tableau
noir ≫. Il coutera entre 40 et 100 milliards de dollars pour les cinq
prochaines annees. L'enthousiasme presidentiel n'en est pas moins
communicatif. Le republicain Newt Gingrich reve d'un enseignement ≪
disponible vingt-quatre heures par jour, sept jours par semaine ≫,
entrainant un bouleversement des attitudes vis-a-vis de l'apprentissage.
Et les ecoles americaines se mettent a remplacer les cours de musique ou
de dessin par des classes d'informatique.

次に五つの翻訳回答です。
●Hさん
その昔、まだ、性教育がインターネットを通じて行われていなかった頃(クリントンスキャ
ンダルのことを指すと思います)、Bill Clintonはまだ情熱的な弁護士で、コンピュータ
ーこそ教育に徳をもたらすと信じていた。 1993年から、彼は副大統領のAl Goreと共
に情報ハイウェーを構築するためのタスクフォースを組んだ。目的は、2000年に向け
てすべての学校をウェブでつなぐことである。当然の結果、学校コンピューターに関する
国家計画によって、コンピューターは<黒板と同様、教室の一部のもの>としなければ
ならない。5年間で400〜1000億ドルの費用がかかる予定だ。大統領を応援する向き
はとても計画に賛同的である。共和党のNewt Gingrich氏は<一日24時間、週7日
フリー>という教育を夢見て、試用期間を奨励した。(????)そして、アメリカの学校
は音楽や美術のクラスを情報のクラスに置き換えたりしている。
●Mさん
コンピューターは子どもを天才にするか?
その身を被告人としてインターネット上の世界的な性教育に投げ打つ前に、ビル・クリ
ントンは既にコンピュータの教育に熱心な弁護人であった。1993年から副大統領のア
ル・ゴアとともに情報網をつくるタスクフォースを設置した。目的は、2000年までにすべ
ての学校にインターネットを接続するというものだった。キーは、情報処理学校はコンピ
ュータを教室や黒板のように当たり前に設置するという国家的プログラムだった。4?10
億ドルを次の5年にかけた。大統領の情熱はたちまち伝わった。共和党員のニュート・ギ
ングリッチは“一日24時間、週に7日”の教育を提唱した。そして、アメリカの学校はク
ラスでコンピュータを使い音楽やデッサンの勉強をする。

●Oさん
インターネットを通じた世界規模の性教育に、不本意ながら身を投じることになる前か
ら、ビル・クリントンはコンピュータが教育にもたらす効果を熱心に弁護していた。1993
年からは副大統領アル・ゴアとともに、情報ハイウェイを開発するための「プロジェクト・
チーム」を設置した。目標は、今から2000年までに全ての学校をネットで結ぶことであ
る。最終的には、コンピュータを「教室で黒板と同じくらいありふれたもの」にする、学校
情報化の国家プログラムだ。400億から1000億ドルが今後5年間に費やされることに
なるだろう。それでも大統領の熱意は浸透している。共和党員ニュー・ジングリッチは、
「週7日、1日24時間対応する」教育を夢見て、実習に対する取り組みに大きな混乱を
巻き起こしている。そしてアメリカの学校では、音楽や美術の時間に代わってコンピュー
タの時間が取り入れられつつある。

●Nさん
不本意にもインターネットを通じて全世界に性教育を施す破目に陥ったビル クリントン
だが、コンピューターの教育的価値を強く訴える彼の姿勢は今に始まった事ではない。
1993年には既に、副大統領アル ゴールとともに高速情報通信網を充実させるための"
特別チーム"を作ったが、その目標とするところは今後2000年迄の間に全ての小学校
をインターネットに接続し、最終的には教室に置かれたコンピューターが黒板のごとく当
たり前の存在になるような、小学校のコンピュータ化という国家的プロジェクトであった。
この計画には当初5年間で400〜1000億ドルを要するものと思われている。
大統領の思い入れに負けず劣らないのがその伝染力だ。共和党議員ニュート ギング
リッヂは”1日24時間週7日”の教育に想いを馳せ、これまでの教育の捉え方に大きな
波紋を投げかけている。また小学校では、音楽や美術の授業をコンピューターの授業に
置き換え始めている。
●Zさん
 ビル・クリントンは、自己弁護のために(不承不承?)、インターネットを通じて全世界の
人々の性教育に乗り出したが、それ以前既にコンピュータの教育的効果を説く熱烈な弁
護士だった。早くも1993年には、アル・ゴア副大統領とともに、情報スーパーハイウェイ
構築のためにプロジェクトチームを発足させている。その目的は、2000年までに全米
の学校をインターネットに接続することだ。さらに言えば、コンピュータを「教室の中で黒
板同様に見慣れたものに」するにちがいない、国家的規模の学校情報化計画だ。この計
画には、向こう5年間で400億ドル〜1000億ドルもの費用を要することになる。
 それにもかかわらず大統領の熱意は他の人々にも勢いよく伝染している。ニュート・ギ
ングリッチ共和党議員は、学校教育に対する姿勢を一変させるような、「1日24時間、週
に7日間、受けられるような」教育を夢見ている。そして、アメリカの学校は、音楽や美術
の授業を情報教育の授業に変更し始めている。

Avant de se lancer - a son corps defendant - dans l'education sexuelle de la
planete via Internet, Bill Clinton etait deja un ardent avocat des vertus
pedagogiques de l'ordinateur.
●a son corps defendantは慣用句で、多くの方が採用しておられる不本意なが
というのが、普通の訳ですね。defendant には被告という意味がありますが、
クリントン大統領は弾劾される可能性はあっても、被告ではないので、ここでは少
し不適切ですね。もちろん不本意ながらでいいのですが、ここの文章の文脈と
からかいの口調から、本人にそのつもりはなかったのだろうがくらいに意訳して
はどうかなと思います。
●Bill Clintonはビル・クリントンですよね、もちろん。でも時事フランス語の翻訳であれ
ば、これはどこのだれかということを最初にでた場所で説明するのが親切です。新聞を
ご覧くださいな。必ずといっていいほど、周知のことであるにもかかわらず、クリントン米
大統領と書いてあります。初出では、どこのだれを明確にしましょう。
●se lancerはなにかを始める、乗り出すですね。la planeteは地球のことだから、
全世界という意味です。英語だとglobe, globalという語に相当しますね。Starr報告書
でクリントンはインターネットを通じた世界的な性教育をしていると、うーんと皮肉ってい
るので、その感じがでる訳がいいですね。Zさんのインターネットを通じて全世界の
人々の性教育に乗り出したがあたりがいいと思います。これにもう少し皮肉な感じがで
てくれば。
●avocat は弁護士、主唱者。クリントンが弁護士の資格をもっていたかどうかは別とし
て(ヒラリーなら弁護士でしたね。でもビルが?)、ここでは弁護士の意味はまったくないの
で、主唱者の意味ですね。ここはOさんとNさんが光ります。
●vertus pedagogiques de l'ordinateurこういう抽象的な表現は訳しにくいですね。
みなさんの翻訳を比べてみましょう。
--コンピュータの教育的効果
--コンピュータの教育的価値
--コンピュータの教育
--コンピューターこそ教育に徳をもたらす
--コンピュータが教育にもたらす効果
最初の二つはどちらも妥当な訳で、間違いではありませんね。コンピュータの教育といっ
てしまうと、コンピュータについて教育になってしまいます。vertusは確かに徳ですが、
コンピュータが道徳的な効果を発揮するわけではありません。ぼくとしては最後のOさ
んの訳が好きですね。最初のお二方の訳でもOKですよ。
あと、ここのところのOさんの訳で優れているのは、熱心に弁護していたという表現が
使ってあることです。弁護ではなく、主唱していたという表現にした方がいいかなとは思
いますが、この訳がいいのは、advocatという名詞を動詞に変えて訳していることです。
慣れないと、名詞は名詞に、動詞は動詞に訳す傾向があるのですが、文章の全体の流
れの中で、自由に変えて訳すことがだいじですね。Nさんの処理の方法もうまいです
ね。

Des 1993, il met en place, avec son vice-president Al Gore, une ≪ Task
force ≫ pour developper les autoroutes de l'information.
ここは問題ないですね。副大統領アル・ゴアという訳が共通してみられますが、日本語で
はゴア副大統領で十分ですね。ビルを省略したように、アルも時事文としてはいらない
情報ですね。

Objectif : connecter toutes les ecoles au web d'ici l'an 2000. A la cle, un
programme national d'informatisation des ecoles qui doit rendre
l'ordinateur ≪ aussi habituel dans la salle de classe que le tableau noir ≫.
●Objectif:という名詞とコロンで文章を切りつめ、キビキビとした表現にしているのは、
何度も取り上げましたが、見習いたいところですね。WebはもちろんWorld Wide Web
のことですが、単にホームページということではなく、インターネットそのものを代表させ
ていますね。ほとんどの方がインターネットに接続すると訳しておられました。A la cle
は文脈からいうと、最終的にはがふさわしいですね。接続するだけでは、コンピュータ
が黒板と同じように教室にありふれたものとなるわけではありませんから。

Il coutera entre 40 et 100 milliards de dollars pour les cinq prochaines
annees. L'enthousiasme presidentiel n'en est pas moins communicatif.
● ここではprochainに注意。suivantがその文章の時点からの未来を示し、
prochainはその発話からの時点を示すということは、時間の形容詞の練習のところ
でやりましたね。ですからここでは、1993年から5年間ではなく、今後5年間といっ
ていると読むべきでしょう。
● L'enthousiasme presidentiel n'en est pas moins communicatif.はかなり意
見が割れましたね。野党の共和党の実力者のギングリッチにまで伝染したということ
でしょうか。

Le republicain Newt Gingrich reve d'un enseignement ≪ disponible vingt-
quatre heures par jour, sept jours par semaine ≫, entrainant un
bouleversement des attitudes vis-a-vis de l'apprentissage. Et les ecoles
americaines se mettent a remplacer les cours de musique ou de dessin par
des classes d'informatique.
下院議長のギングリッチは共和党員ですね。米国の議員について書くときには、ギング
リッチ共和党議員と書くのが通例です。ニュートも日本語ではいらない情報。それよりも
下院の議長であるという情報の方が本当は重要なのです。野党の実力者ということです
から。
●entrainant un bouleversement des attitudes vis-a-vis de l'apprentissage.
も意見が分かれましたね。
-試用期間を奨励した。(Hさん)
-教育を提唱した (Mさん)
-実習に対する取り組みに大きな混乱を巻き起こしている。(Oさん)
-これまでの教育の捉え方に大きな波紋を投げかけている。(Nさん)
-学校教育に対する姿勢を一変させるような、(Zさん)
l'apprentissageは教育の語の言い換えですね。フランス語の文章の書き手は、同じ
語を繰り返すのを避けて、機会さえあれば、言い換える癖があります。試用期間や実習
のように語義的にとる必要はないですね。bouleversementは根本的な転換を指しま
す。悪い事態とは限らないので、混乱といってしまうと、よくないでしょう。最後のおふた
かたの訳が近いですね。ぼくはZさんの訳が好きかな。des attitudesのdesがあい
まいなので、この文はこれ以上は訳しかえられないのです。ここでは公衆の姿勢という
ことだと思いますが、下院議長の発言なので、議会の姿勢とも取れるのですね。これは
文章の書き手の問題ですね。
●最後の文章は、そしてアメリカの学校では、音楽や美術の時間に代わってコンピュー
タの時間が取り入れられつつある。というOさんの訳が一番気に入りました。Nさんの
訳もいいですね。ただぼくはremplacerに置き換えるという表現はできる限り避けて
います。AをBで置き換えるというと、表現によっては、どちらが残ったかがわかりにくい
ことがあるのです。AにBを置き換えるという言い方も、同じくあるでしょ? Oさんの表
現なら、その点について誤解の余地はないですね。
そして、アメリカの学校は、音楽や美術の授業を情報教育の授業に変更し始めてい
る。というZさんの訳もいいのですが、はたして変更したのかどうかという疑問があり
ます。たんに音楽の授業を減らして(あるいはやめて)、コンピュータの使い方の授業にし
たというだけのことでしょうから。こまかなところですが。
あとdisponibleは利用できるということですから、いつでも自分の好きな時間に受けら
れるオンライン教育ということですね。ですからZさんの訳がいいかと。フリー(Hさん)と
いうのは少し視点が違うかな。対応できる(Oさん)というのはうまい逃げ方なのですが、
言っていることが明白なので、ここで逃げなくともと思います。逃げるのはホントに困った
ときにしようね、Oさん。

ああ、疲れた。翻訳の世界(2)は残念ながら次回に。例文を出されなかった方々も、そう
か、こんなことを考えて読めばいいのかと、思っていただければうれしいです。ただ、こ
んな調子でやっていては終わらないかも。
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寺田 駿 official:terra@cyberdude.com
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