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時事フランス語(第35号)
(1998年12月6日発行)
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レベル★☆
今回から、基本的なフランス語の熟語の復習をしましょう。フランス語の検定の2-3級く
らいに合わせて、できるだけ多数の例文を練習しましょう。次の回に解答を出しますが、
それまでに辞書を引いて確認して、できれば覚えておいてくださいね。
やりかたはこれまでのlocutionと同じ方式です。

001. Je ne peux pas me passer ( ) toi.
[君なしではいられない。]
002. Il ne s'est pas fache, ( ) contraire, il etait content.
[彼は怒ってなんかいないさ、それどころか喜んでいたよ]
003. C'est ( ) le bien de votre fils que je vous le dis.
[わたしがこういうのは、あなたのお子さんのことを思ってのことですよ]
004. Il s'est absente dix minutes ( ) plus.
[彼が中座していたのはせいぜい10分間のことだ]
005. Il a agi avec une adress ( ) pareille.
[かれはたぐいまれな巧みさで行動した]
006. Il fait semblant ( ) dormir.
[彼はたぬき寝入りをしている]
007. C'est ce qu'on appelle techniques ( ) points.
[それは先端技術と呼ばれているものだ]
008. Je suis oblige ( ) sortir, j'ai rendez-vous.
[おいとましなくては。約束がありますの]
009. Je voudrais ( ) finir avec cette tache ennuyeuse.
[この面倒な仕事にはけりをつけたい]
010. Il a joute un coup d'?il ( ) le journal.
[彼は新聞をざっと読んだ]

候補となる語 (いくつか重複があります)
sans, sur, en, de, au, pour


翻訳の世界(2)
●翻訳と文化
さて今回は翻訳者の適性について少し考えてみましょう。どんな方が翻訳者になる
のに向いているのでしょうか。

まず第一に外国語を好きになれることですよね。これが最初の一歩で、この一歩を経
験されない方は、翻訳には最初から関心をもたれないでしょう。外国語を好きになるとい
うのはどういうことかは、読者の方々はよくご存じだと思います。

外国の言葉を学び、理解し始めた時のあの世界の広がる感じは、経験者でないとわ
からないのかもしれません。それまでわけのわからない音や文字の集まりであったもの
が、突然のように意味をもって迫ってきます。それまで知らないよその人たちだった人々
が、隣人として、自分と同じような願いと苦しみをもった人々として、「顔」のある人々とし
て現れてします。

きっかけはなんでもいいのですよね。映画をみたり、小説を読んだり、その土地に旅行
したりして、これまで無縁だった人々に対する共感が生まれる。そしてその人々の話す
言葉に関心をもつ。これが最初の一歩です。

でもそれだけでは翻訳という仕事にはまだまだ進めませんよね。一度ある種の文化的
な変身のようなものを遂げる必要があるような気がします。それはこれまで異質なもの、
無縁なものとみていた人々のうちに、自分と共通する人間の顔を見出だすことによって、
ぼくたちが生きている日本という社会に対する目が、一度変わる必要があるということな
のだと思います。

日本人として日本の社会のうちに生きていると、ごく当然として見過ごしていたものが、
他の社会、他の文化、他の言語を学ぶうちに、まったく普通のものでも、当然のものでも
ないこと、世界の中で一つの特殊なものであることに自覚を迫られるのです。そして他
の言語で話し、文章を書くようになると、一つの別の人格のようなものが、ぼくたちの中
に形成されます。その人格は、あるいは日本の社会や文化に対して、強い批判的な機
能を発揮する場合もあるかもしれないのです。

翻訳者はいわば二重の人格を強いられます。しらずしらずのうちに。学んだ言語の社
会と文化にいくらか同化しないと、その言語を習得することはできません。それはある意
味では、自分の生まれ育った文化を否定するような意味をもちます。しかし同時に、自分
の生まれた文化と社会の中で生きなければ、他の言語や他の社会を理解することはそ
もそもできないのです。バイリンガルの人も、自分が生き、感じ、考えることのできる言葉
は、その生きている時点において、ただ一つであるはずです(途中で変わるとしてもで
す)。

翻訳の可能性については哲学の世界ではさまざまな議論があるようです。でも翻訳者
はどこか裏切り者のような役割を果します。翻訳とは裏切りであるというのは有名な言
葉ですが、それは翻訳だけでなく、翻訳者にもあてはまります。自国の文化を否定しな
がら、他の国の文化を肯定し、しかも他の国の文化に同化するのではなく、自国の文化
から離れないという微妙な地位をとることが求められるのです。

すこしおおげさな言い方で、すみません。でもそれは人間の理解力を深める重要な体
験でもあるのではないでしょうか。ぼくはインドネシア語を半年学び、バリ島に二度いっ
ただけですが、インドネシアで現在起きている動乱は、他人事とは思えません。自分た
ちが過去において経験した問題を、隣人が別の状況で直面していることとして切実に感
じられます。

フランスについても同じことですよね。夫婦以外の家族に法的な地位を認めるための
法案などは、いずれ日本でも直面するはずの問題であり、隣人が別の状況でぼくたちが
未来において経験するはずの問題に直面しているわけです。

外国語を学ぶということ、翻訳者になるということには、こうしたプラスとマイナスの両
面があります。翻訳者に向いているひとは、そのことが苦痛でなく、それを喜びと感じら
れる人だと思います。

●翻訳と通訳
しかし外国の言葉を仕事で使うのは、翻訳者だけではありません。通訳者もいますよ
ね。ではどういう人が通訳者になって、どういう人が翻訳者になるのでしょうか。同じ外
国語のを使うとしても、この二つの仕事にはかなり大きな違いがあります。

通訳の醍醐味は、人間関係を楽しめるということでしょうね。生き生きとした人間のつな
がりのネットワークが、通訳者の仕事場です。多分旅行も頻繁にしなければならないで
しょう。クライアントの世話なども、付随的についてきます。ぼくの友人がアメリカで同時
通訳をしていますが、それをみていると、翻訳者との違いがよくわかります。人々との関
係を楽しみながら、即座に必要な単語がでてくるように記憶していて、しかも言語につい
ての研鑽を怠らないという(ぼくからみると)超人的な素質が必要のようです。

これに対して翻訳は基本的に机に座ってするse'dentaire仕事です。単語を忘れてい
たら辞書を引けばいいのです。というよりも、辞書の引き方、辞書の用意の仕方を知って
いることが重要な「装備」です。辞書はたくさん引けばひくほど、その語のもつ世界がみ
えてくるので、時間のゆるす限り、辞書は引いた方がいいのです。

翻訳者と仕事関係の仕事のやりとりは、一日数本の電話ですんでしまいます。あるい
は大きな仕事を受けてしまうと、一月の間だれとも話しをする必要はないかもしれませ
ん。だから人間関係があまり得意でない人にも、翻訳の仕事は向いていますよね。その
かわり通訳の場合よりもはるかに緻密さと丁寧さが要求されるような気がします。文書
になってすべてが残るので、うっかりミスは基本的に許されません(もちろん人間ですか
ら間違えます)。翻訳をされる方は、通訳の方よりも孤独を好み、几帳面な性格の方が
多いように見受けられるのは、そのせいかもしれません。これはぼくの個人的な感想で
すが。
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映画のマガジンの読者のあきさんからメールをいただきました。

>寺田さん こんにちは
>
>映画で学ぶフランス語を購読しているものです.
>いつもありがとうございます.
>
>本当はメーリングリストにも入りたいのですが,
>肩身の狭い会社メーラーの為,そこまではできません.
>
>先日はじめてHPへお邪魔して,時事フランス語ページを
>見せていただきました.
>第29号にあった翻訳の世界のお話,大変参考になりました.
>
>実は,私も将来はフランス語の翻訳に携わることを
>目標としています.
>まあ あくまで夢はデッカくというところで,今のところは,
>自力をつけることに努めて,翻訳の勉強は始めていません.
>
>最近,翻訳の仕事をされる方も翻訳学校などで勉強した
>方が増えていると聞いています.
>それを頼りに,私も時期をみて翻訳学校などで勉強したいと
>思っています.
>
>そこで,翻訳学校の実状,またその卒業生の方の現場での
>仕事ぶりなど,寺田さんが感じてらっしゃることでいいので,
>率直なコメントを伺いたいのです.
>
>翻訳ガイドなどをみても,まずフランス語の翻訳学校の情報が
>少ないですし,その多くは宣伝広告なので,いまいち実状が
>わかりません.
>
>バベル外国語学院のお試し翻訳でもやってみようかぐらいに
>しか選ぶ基準がないのです.
>
>ぜひ,御意見を聞かせて下さい.
>
>たぶん,このような質問は多くのビギナーが知りたいと思っている
>ことだと思います.
>私に直接お返事いただかなくても結構ですので,また翻訳の世界について
>何かを書くときに意見を聞かせていただければ幸いです.
>
>
>宜しくお願いします.
>
>
>Trois hommes et un couffin,いよいよおもしろくなってきましたね.
>続きが楽しみです.
あきさん、こんにちは
マガジン、最近さぼり気味ですみませんね。でもちゃんと続けますから
見捨てないでくださいね。

フランス語の翻訳者になるための学校というのは、ほとんどないのですよね。
バベル外国語学院のようなところもありますが、週一回の授業では一年やっても仕事に
結びつかないという嘆きを聞いたことがあります。
ぼくは実はフランス語の翻訳の学校のことについては詳しくないのです。読者の方でこう
した学校に通っておられるかたがおられたら、教えていただけないでしょうか。
てらだにメールをお送りいただければ、マガジンでご紹介したいと思います。
よろしくお願いしますね。

ところでぼくは昔のことですが、英語の小説の翻訳家養成クラスというのにしばらく通っ
たことがあります。本科を終えて、研究科にすすむと、そこは先生と女性の生徒たちがな
んだか息苦しいような濃い師弟関係の空間をつくっていて、ぼくはほうほうのていで逃げ
出しました(笑)。数人は先生に認められて翻訳家としてデビューしていたようですが。ぼ
くもそこでがんばっていれば、今頃は小説の翻訳家として、家でも建てていたかもしれな
い(笑)。
あきさんもぼくの悪いお手本は見習わずに、なんとか夢を実現してくださいね。
===========================

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このファイルは、WindowsをOSにしておられる方なら、だれでもアクサンつきで読む
ことができるはずです。
「スタート」から「プログラム」を選んで、「アクセサリ」を選択すると、その中にワードパッ
ドのプログラムがあるはずです。ファイルをダウンロードした後で、開くのところでファ
イルの種類をリッチテキスト形式(.rtf)にしてください。するとダウンロードしたファイル
が文字化けなしに開けるはずです。
ぜひアクサンつきの文をお読みください。


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時事フランス語第35号 [1315部]
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寺田 駿 official:terra@cyberdude.com
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