『ラインホルト・メスナーの肖像』発表1周年レポート
『ラインホルト・メスナーの肖像』はスバラシイ
『ラインホルト・メスナーの肖像』(99.4.21) 1.Narcolepsy 2.Don't Change Your Plans 3.Mess 4.Magic 5.Hospital Song 6.Army 7.YourRedneck Past 8.Your Most Valuable Possession 9.Regrets 10.Jane 11.Lullabye |
2.つかみ所のない魅力 「みんなをびっくりさせることにこそ面白さがあるんだ」 ― BEN FOLDS ― ●昨年4月、発売前日の夕方。初めて『メスナー』を聴いたときの感想は、正直な話「なんじゃこりゃ」だった。ある程度(?)の変化には対応できるように身構えていた。しかし『メスナー』の「音」は全く予想外で、”Narcolepsy”と前から聴いていたシングル”Army”には「おーっ!」って思ったが、他の曲には当時脱力感すら感じてしまった。それからライブがあるまであまり聴かなかった気がする。 ●ライブ終了後、ぼくは『メスナー』を聴きまくった。BF5がこのようなアルバムを作るには、絶対どこかに理由があるはずで(しかも2ndより2年間の期間がある)、その魅力を何度も繰り返し聴くことによって非力ながら自分で確めようとした。するとおもろいことにだんだんハマっていくのである。そこには、ノースキャロライナ、チャペルヒルのつき抜けた青空よりもはるかに深い、BEN FOLDS FIVEの宇宙があった。 ●その徐々に『メスナー』の世界にとりつかれていく過程は、まるでBeatlesの『Revolber』や『Sgt.Peppers』、Beach Boysの『Pet Sounds』、コステロの『All This Useless Beauty』、Paul McCartneyの『Ram』、Beckの『Oderay』のそれと似ていた。最近で言えばoasisの『〜Giants』か。ここに挙げた作品はいずれも名盤(!?)といわれる作品で、1度聴いただけでは、ぼくには理解できなかった。しかし『メスナー』を含めてこれらの作品には、「つかみ所のない不思議な魅力」があり、これは、「中途半端でおもしろみに欠ける」という意味に容易に入れ替わる。 3.「空気」の変化 「ドラマちっくなアルバムを作ろうと思った」 ― BEN FOLDS ― ●BF5は今日までに、編集盤『Naked Baby Photos』を除くと3枚のオリジナルアルバムを世に送り出しているが(「でぃすこぐらふぃー」参照)、3枚ともそれぞれアルバムを象徴する「音」の違いがわかるだろうか。ここではその音を「空気」という言葉で表現していくことにする。 ●1st『BEN FOLDS FIVE』には「少し荒っぽくてキレのある」空気、2nd『Whatever〜』には「ややソフトで親密」な空気がある。しかし、ライブでは1stの曲も2ndの曲も同じテンションで演奏されることが多く(1st的なアプローチ)、”Dwarf”や”Kate”、”Battle”、”金返せ”などなどのライブバージョンがいい例である。 ●では、3rd『メスナー』の空気はどうだろうか。1stにも2ndにもない「引き締まった緊張感」(ここでいう緊張感とは、いい意味でピリピリした感じ)がアルバムを支配し、”Narcolepsy”や”Plans”をはじめ、これまでのBF5にはありえなかったような曲がドラマちっくに展開している。「緊張感」で考えると1stには劣るかもしれないが、アルバムとしての「コンセプチュアルな統一性」、そしてなによりも「深み」は『メスナー』のほうが圧倒的だ。2ndでは、ツアーの合間のレコーディングということもあって、ともすれば散漫になりがちな楽曲群を、ムリにひとつのアルバムにまとめたような気もする。2ndに対しては、BEN自身もあまり納得がいってなかったようだ。 ●また『メスナー』は、アップテンポの曲が今までのアルバムに比べ極端に少ないが、それでいて「緊張感」が保たれているのはなぜか。ぼくはそれを「数々の楽器の導入による大胆なアレンジ」に見ている。もともとBF5のスタイルは、ピアノ・ベース・ドラムで十分足りえるのだが、今までにないホーンやストリングス、シンセを配した楽曲構成により、本来のBF5らしさに異物感が加わる。したがって「あれ?これがBF5?」と思いながら「やっぱりBF5だ」といった不思議な錯覚を覚える。そして歌詞も・・・。 |