さて、ここでは「コード」と呼ばれるものについて説明しましょう。
 日本語でいえば「和音」です。聞いたことがあるでしょう。
 和音とは文字どおり「音の和」、つまり音と音の足し算です。
 例えば、「1」という数字はそれだけでは「1」以外の何物でもありませんが、「1」に「1」を足せば「2」になるし、「3」を足せば「4」になります。
 つまり、ひとつの音では何の変哲もないただの音であっても、ふたつ以上の音が同時になるといろいろな表情を持つようになる、ということです。
 通常コードは3つの音で構成されます(注1)。

 理屈ばかり書いていても面白くないので、実際に例を見てみましょう。
 図1を見てください。
 左から順に「ド」、「ミ」、「ソ」ですね。
 最後の音符はその3つの音が一緒に書いてあります。
 つまり、「ドミソー」と演奏してからドミソを同時に演奏する、という意味です。
 では、これを聴いてみましょう(サンプル1)。
 どうですか? 最後に3つ一緒に鳴ったのがわかりますか?
 これは合唱などでよく使われる音あわせのフレーズですね。

「ドレミファソラシ」という呼び方はもともとイタリア語で、英語では「CDEFGAB」と呼びます注2)。
「A」から始まらないのが奇妙なんですが、そういうことになっているので仕方ありません(注3)。
 読み方はそのままアルファベットで読んでください。
 つまり、英語では「ド」の音を「C」と呼ぶわけです。
 シャープやフラットはそのまま読んでください。
 ここから先は決まりごととして覚えてほしいのですが、「ド」、「ド」から4つ上がった(注4)「ミ」、「ミ」から3つ上がった「ソ」、この3つの音をコードとして使った場合、コードの名前は元となる「ド」の音を英語で読んで「C」と呼ぶんです。
 したがって、「ファ#」、4つ上の「ラ#」、さらに3つ上の「ド#」は「F#」というコードです。

 では、「基礎知識編」の「調について」で学んだことを思い出してください。
 調には「長調」と「短調」がありました。
 図1の場合は「長調」ですね。
 では、「ミ」、「ラ」、「シ」をそれぞれフラットにしたとき、つまり「短調」で同じ事をやった場合、どうなるでしょう。
 図2を見てください。
 ここではわかりやすくするために、調は長調のままです。
 すると、「ミ」の音がフラットになるだけですね。
 では実際に聴いてみましょう(サンプル2)。
 どうですか? 短調独特の陰気さが出ているでしょう。
 このように短調を基本としたコードを総称して、「マイナーコード」と呼びます。
 それと対照的に、先ほど例を挙げた長調を基本としたコードを「メジャーコード」と呼びます。
 図2のコードは「Cのマイナーコード」、つまり「シーマイナー」と言います(注5)。
 表記は「Cm」です。小文字のエムが「マイナー」の意味です。
 メジャーコードの場合は余計な文字はつきません。
 つくこともありますが、それはこれから説明します。

 さて、3つの音で作るコードにメジャーとマイナーがあることがわかりました。
 これだけでも充分曲は作れますが、このほかに知っておくといろいろと便利なコードがあります。
 とりわけ重要なのは、4つめの音をさらに追加するコードです。
 図3を見てください。
 このように、3つめの音からさらに3つ上の音を足したコードを、「セブンスコード」といいます注6)。
 表記の方法は、コード名の最後に「7」をつけるだけです。
 また、3つめの音から4つ上の音を足した図4のようなコードを、「メジャーセブンスコード」といいます。
 こちらの表記は、コード名の最後に「M7」をつけます。
「M」はメジャーの意味です。
 それぞれ、2つめの音がメジャーかマイナーかによって組み合わせがあります。
「C」を例に挙げれば、「C」「Cm」「C7」「Cm7」「CM7」「Cm(M7)」となります(図5)。
 実際にはサンプル3のように聞こえます。
 メジャーとつけたりマイナーとつけたりするのが3つの和音のときと逆なのに注意してください(注7)。

 ほかにも、元の音→3つ上→3つ上→3つ上というディミニッシュセブンス(dim7)や、2つめの音を半音上げるサスフォー(sus4)などのコードがあります。
 使えると面白いのですが、ここでは触れないことにしましょう。
 また、実例は挙げませんでしたが、「ドミソ」でも「ミソド」でも「ソドミ」でも、みんな「C」というコードです(注8)。
 若干雰囲気が違いますので、都合に合わせて適当に選びましょう。


この節の注釈

注1……日本語で「三和音」、英語で「トライアド」と言います。もっとも、そんなことはホンモノの音楽家だけが知っていればよいので、要は「コードは3つの音からなるのが普通」と思っていてくれれば結構です。
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注2……ちなみにドイツ語では「CDEFGAH」です。読み方はドイツ語なので「ツェーデーエーエフゲーアーハー」です。「シ」がどうして「B(ベー)」でなく「H(ハー)」なのかは知りません(^^; 余談ですが、芸能人の使う業界用語で「1万」のことを「ツェー万」(ドイツ語風)と呼んだり、「30」のことを「イージュー」(英語風)と言ったりするのはここからきています。「1」→「C」、「2」→「D」というわけですね。
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注3……まあ、日本語読みでも「ハニホヘトイロ」というふうに、「イ」から始まっているわけではないので、何かちゃんとした理由があるんでしょうね。
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注4……半音を入れて数えています。「ド」→「ド#」→「レ」→「レ#」→「ミ」で4つ、というわけです。このあたりの説明は「基礎知識編」の「楽譜の読み方」や「調について」でもやりましたね。全音で数えれば、「ド」→「レ」→「ミ」で、「ミ」は3番目の音ですから「サード」、「ソ」は5番目の音ですから「フィフス」とも呼びます。ちなみに元となる「ド」はファーストではなく「ルート」です。
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注5……より正確な説明をしてみましょう。ルートとサードの間が長3度(全音2個分)離れたものをメジャー、短3度(全音1個と半音1個分)離れたものをマイナーと呼びます。文章にすると堅苦しいので、「そんな感じ」で覚えてください。
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注6……注4と同じ数え方をします。つまり、「シ」は「ド」から全音で数えて7番めですから「セブンス」というわけです。
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注7……同じにしてしまうと、「ド」「ミb」「ソ」「シ」も「ド」「ミ」「ソ」「シb」も「マイナーセブンス」と呼ばれることになってしまい、混乱してしまうからでしょう。正しくは、前者は「マイナーメジャーセブンス」、後者は「セブンス」です。
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注8……ルートが一番下にこないコードを「転回形」といいます。
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