まず、図1を見てください。
ごく普通の8ビートの曲の一部分です。
Aメロ部分はイントロと同じものだと仮定すると、まさに最後のサビが終わってエンディングに向かおうとするところなわけです(サンプル1)。
聞いてみてわかるとおり、サビの部分を4小節繰り返し、つなぎを4小節、Aメロを4小節繰り返しています。
4拍子が基準である以上、それぞれの部分が4の倍数回繰り返されるのは正しいことなのですが、つなぎの部分が何とも冗長です。
どこがといえば、やはりAmが2小節連続する部分でしょう。
ではここを別のコードにしたりギターのカッティングを変えたりしたほうがいいでしょうか。
でもせっかくF→G→Amというつながりをつくったのに、E7などで流れを変えてしまうのは好ましくありません。
ギターのカッティングを変えたところで、メロディの「ラ」の白玉は変わりません。
ぼくならばここで、つなぎのAm2小節を削ってしまいます(図2)。
直後に続くAメロの出だしもまたAmであるため、コードの流れはそのままに保てます(サンプル2)。
こうすれば、メロディの「ラ」の白玉もそのまま活かせますし、冗長さも簡単に解消できます。
結果としてサビ4小節、つなぎ2小節、Aメロ4小節となりますが、不自然さはありません。
上記の例ではつなぎの部分は4拍子のまま変わりませんでしたが、ゆったりした曲の場合には拍子そのものが変わってしまうこともあるでしょう。
つなぎの部分が2拍子になることもあるでしょうし(あまり変わらないのでサンプル省略)、ときには3拍子なんかになるかもしれません(サンプル3)。
さらに倍速のハチロクになる場合もあるかもしれません(サンプル4)。
冗長な部分をカットする。
これが「途中で拍子を変える」最も基本的な理由であり、手段です。
さて、さきほどのサンプル4を聞いて違和感を感じた人もいるでしょう。
さっきまで4分音符1回ごとにリズムをとっていたのに、つなぎの部分では8分音符3回で1回リズムをとらなければならなくなっているからです(注1)。
それまでのノリを壊してしまうわけですが、これを意図的にやってみるのも面白いかもしれません。
「構成・アレンジ編」の「アレンジとは?」の注1で少しだけ触れましたが、長い曲ならば組曲として作ることもできます。
これを短い曲でやる、あるいは長い曲でも短いスパンでやることにより、ちょっとだけ前衛的な曲を作ることができます(注2)。
サンプルは挙げませんが、「楽曲貯蔵庫」においてはオリジナルの「Die Schattenseite der Seele」、コピー曲の「男型ドゥエンディ戦闘」「A reinforced concrete」がこの手法を使っています(注3)。
コピー曲における意図はぼくには定かではありませんが、「Die Schattenseite der Seele」に限って言えば、「素直にリズムをとらせない」ことを目的に拍子を変えたりしました。
こういうひねくれた曲作りを読者の方が好きかどうかはわかりませんが、このような方法もある、ということは知っておいて損はないかもしれません。
注1……そのまま4分音符で首を振っていてもリズムは狂いません。ただ、そうするとハチロクではなく3拍子になってしまいますが。
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注2……前衛的、すなわちプログレッシブな曲です。プログレッシブロックというのはたいがい変拍子を使ってますね。
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注3……ぼくがFM音源で曲を書いている時代、ほとんどの曲で「転調」「変拍子」を使っていたことがあります。基本的に好きなんですね、こういうちょっと壊したような曲が。コピー曲はともかく、自分で作る曲の大半が若干前衛的であった、ということは、悪くとれば、普通の曲作りがきちんとできないがゆえのいわば「逃げ」なのですが、大学時代プログレサークルに在籍したこともある「プログレ好き」なやつの作る曲ということで勘弁してください(^-^;
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