目上の者には礼を尽くせ

 当然のことだろうな

 しかし、礼儀、と言うか、挨拶のなっていない者をよく目にする

 例をあげようか

 数年前、俺が家庭教師として初めて生徒の家へ行ったときのことだ
 生徒は中2の男子
 関係ないようだが、家は金持ちだ

 母親に案内された部屋のドアを開けると
 そのガキお子様が俺を待っていた

「こんばんは、初めまして」

 とりあえず、最初が肝心、と思い
 多少緊張しつつも、にこやかに挨拶

 それに対するそのガキの態度は
 ちらっとこっちを見てニヤっと笑うのみ

 次の瞬間、
 俺はそのガキの頭を掴んで
 揺すりながら叫んでいた

「オイ、挨拶は!?
 こんばんわだよ
 こ・ん・ば・ん・わ


 何故か、キレた

 そのせいだろうか、結局、そのバイトは  1月ももたずに馘になった
(いや、1月近くもった、と、言うべきだろうか?)

 後になって、何がそんなにムカついたのか、考えてみた
 そして達した結論は、こんなところだ

 家庭教師、とはいえ、俺はものを教えに来ているわけで
 卑しくも『先生』と呼ぶべき目上の人物に対し
 初対面ですら挨拶も出来ないこと
 多分、そのことに対して、俺は我慢できなかったんだと思う

 確かに、金を貰っている立場なわけだから
 向こうは『お客様』なんだろう
 だが、俺はそのガキに金を払ってもらっているわけでもなければ
 そのガキに対して何の引け目も感じるいわれはない
 金を払っているのはあくまでもその親なのだから

 その道の先人には敬意を払う
 こんな当然のことすら出来んやつが増えつつある
 親の躾の悪さゆえ、だろうな

 ある本で読んだ台詞が気に入っている

「親ってのは、ただ、餓鬼が人の道を踏み外したときのために
 拳を鍛えておきゃいいんじゃないですかね」


 たしかこんな感じだった

 その前の台詞、
「餓鬼なんてほっときゃ勝手に育つもんです。ただし・・・」
 から続いたはず

 なるほど、と思った
 真理だ

 最近の親に物申す
『自由にさせる』と『甘やかす』を混同していないか?
 悪いことは悪い、いいことはいい
 その辺を理解させた後の『放任』じゃないのか?

 特に父親
 子育てを母親ばかりに任せず
 たまには威厳を見せてみろよ
 親父らしく、さ



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