「私って、やっぱり文才が無いんだわぁっ!」
今日は12月23日天皇誕生日・・・・・・・あっ、いや、それはどうでも良い。明日はクリスマス・イヴなのだ。では、私、宮沢雪野はいったい何をしているのか?
Merry Christmas To You
Written By ガトー
「だぁーぁ!ラブレターが書けないっ!」
そう!性懲りもなく有馬に渡すラブレターを書いているのだ。いや、正確にはクリスマスのプレゼントに添えるカードなのだが。
なんでこんなことになったのかといえば・・・・
私が、期末テストも終わり『今年は夢にまで見た恋人といっしょのクリスマスがやってくるのねぇ!』と有馬の横顔を見詰めながら考えていたときだった。
「なあ、有馬ぁ!クリスマスはみんなでワイワイやろーぜぇ!」
《ピクッピクッ!》 ← 私の眉間がひくひく動く音
「ダメ・・・」
「いいねぇ!そうしようか!ね、宮沢もいいだろ?」
速攻であさぴんこと浅場秀明の提案を跳ね除けようとした私の声は、有馬の一言で掻き消された。
『がーん、2人っきりのイヴがぁ・・・・・・・』
だが、そんな私の心の中の叫びなど届くわけもなく、まして鈍い有馬が気づくわけが無かった。
「じゃぁ、宮沢、君の友達も誘っておけよ。なんたって『浅葉メリーランド計画』の第一歩だからな。」
「あさぴん・・・・・それは諦めたんじゃなかったのぉ?」
「規模を縮小しただけだ。じゃ、そういうことで!」
「あっ、ちょっとぉ!・・・・・いっちゃった。」
あさぴんは疾風のごとく走り去った。
「でも、ちょっと残念だなぁ・・・クリスマスは宮沢と2人っきりで過したかったのに。」
「えっ!」
有馬の何気ない言葉に声を上げる私。お互いを見詰め合い・・・・・・・・・・・・・そして、真っ赤な顔のままほとんど同時に俯いた。
『やっぱり、有馬も私と同じこと考えてたんだ。うれしいっ。』
ますます顔が火照ってきた。
『い、いかん。これではいつぞやのキスのときのようにのぼせてしまう・・・・・。』
「何やってんの?ゆきのん。」
私の肩を誰かが叩いた。少し残念少しほっとしながら声のほうへと振り返る。
「あっ、りかちゃん・・・・いや・・・・その・・・・はははは。」
いつものD組の4人がいつの間にやら私の後ろに立っていた。つばさちゃんの視線が痛い。私はとりあえず笑ってごまかした。
「ああ、君たちも来るだろう?クリスマスパーティやるんだけど。」
「へえっー、ゆきのんがOKだったら、うちらはもちろん行くよ。」
基本的にこのメンツだと椿がOKならOKみたいだ。この際、2人の仲をあさぴんに邪魔されるくらいなら、みんなでワイワイやったほうが良い。
「も、もちろん行くよぉ。行くに決まってるじゃない!」
「じゃ決まりぃ。4人追加ということで。」
そんなこんなでクリスマスイヴは有馬と2人きり・・・・・ではなく、みんなでワイワイということになってしまった。まあ、それもいいだろう。
つまり、2人きりならいくらでも言葉や態度で、有馬への想いを伝えることができたのに、それができなくなってしまったので、クリスマスカードだけは自分の気持ちをいっぱいに書き込んで渡したい。・・・・・そう思ったのだった。
が・・・・・・
「私って、やっぱり文才が無いんだわぁーぁ!あー、どうしよーっ!」
既に便箋は3冊目に突入している。ごみ箱は破棄され、丸められた1冊目の便箋の残骸であふれかえっていた。
「お姉ちゃん。もう諦めて寝れば?もう、1時だよ。」
月野が眠そうな声で私に警告する。たしかに眠い。でも・・・・
「駄目!ここで負けるわけにはいかないのよ!」
久しぶりに机の奥から鉢巻きを取り出して自分の頭にセットした。
「これでパワーアップよ。」
「・・・・じゃ、おやすみ。お姉ちゃん。」
月野は眠そうに目をこすりながら私の部屋を出ていった。長い夜が始まった。
24日当日、そろそろ有馬の家に行く時間だ。
『ね、ねむい・・・・』
寝ていないのだから当然の結果だった。5分と経たないうちに睡魔に襲われる。結局、気に入ったものが完成したのは24日、つまりクリスマスイヴ当日の午後だった。
「眠くて・・・死んでしまうがねぇ・・・・・・。」
「お姉ちゃん大丈夫ぅ?」
花野が覗き込む。服装こそ手持ちのもので一番良いお気に入りを着ているが、目の下の熊はどうあがいても消せない。
「多分・・・・・。」
「顔に死相が出てるよ。」
月野の鋭すぎるつっこみが私の感情を容赦なくえぐる。
「わかってるってば。行くよ。」
「「はーい!」」
私を含めた宮沢3姉妹+ぺろぺろの一行は、今度のパーティの会場である有馬の家へと向かった。
パーティといっても身内で、しかも妹たちを除けば全員同じ学年だ。いつものようにゲームをしたり、カラオケ(あさぴんがレンタルビデオ屋さんから携帯DVDプレイヤーとDVDカラオケのソフトを借りてきた)をしたりと、大いに盛り上がった。
「りかの作ったケーキ、ちょー、おいしいっ!」
「つばさちゃん、お姉さんと着せ替え人形ごっこしましょっ!」
「あさぴん!脱げぇ!」
「こい!流星王!」
「きゃんきゃん。」
・・・・と何やら、訳が分からなくなるくらい盛り上がり、そして、プレゼントを交換する時間になった。
● ● ●
それぞれ、プレゼントを交換するのだ。この時のために昨日から徹夜したんだから!
私はもちろん有馬・・・・
「有馬ぁ!この俺のプレゼントを受け取ってくれぇ!」
しまった!あさぴんに先越された・・・・。
「なんだい?開けても良いか?」
「ああっ!もちろんだよ・・・・・ちなみに中身は俺の使用済みパンツだ。」
『・・・・・・・・・・』
辺りの空気がどんよりとした有毒ガス雲で覆われたような気がした。
「じょ、冗談に決まってるだろうっ!本気にするなよ。な、なんだよ、みんな本気にしたのかよ?」
「だって・・・・・あさぴん、本気でやりそうで冗談に聞えないんだもの。」
私がはっきり断定する。
「シクシク・・・・・中身は正月映画のペアチケットだよ。宮沢とでも行ってこい。」
「え?あ、ありがとう。やっぱりあさぴんは気が利くね。」
私は素直にあさぴんの行為に感動した。
「でも、有馬、俺と見に行きたかったらいつでも声をかけてくれて良いぞ。」
感動した私が愚かだったかも・・・・。
「余計なことを付け加えるな!」
「へいへい。」
あさぴんはしぶしぶ引っ込んだ。
● ● ●
「次、私ね。」
有馬の前に一歩前進したときだった。突然、私の視界いっぱい真っ赤なものが広がった。
「・・・・・バラ?」
「宮沢に。」
それは抱えきれないほど大きなバラの花束だった。
「こ、こんなに?私にぃ!?」
「そう!宮沢にだ!」
バラの花束に負けないくらい真っ赤な顔をして有馬が力説する。
「あ、ありがとう。」
それしか声が出てこなかった。
『こ、こんなにたくさん・・・・・・・・・あ、あれ?』
手がうまく動かない・・・・・・な、なに・・・・・意識が・・・・・・
「み、宮沢!」
有馬が慌てて倒れかけた私の体を支えた。どうやら私は・・・・のぼせたのかな?とにかく、ソファに横になる。
「お姉ちゃんねぇ、昨日から有馬さんのプレゼントに添える手紙を書くのに徹夜したんだよ。」
月野が少し呆れながら言った。
「どーして君は、そんな無茶をするんだよぉ!」
「へへっ・・・」
「へへじゃなーい!」
私が苦笑いで応えると、有馬は本気で声を荒げた。
『心配してくれてありがとう。有馬ぁ。』
ぼんやりと見える有馬もやっぱりかっこいいと思う。
「じゃ、宮沢、かわりに俺が読み上げてやろう。」
「止めろ秀明!」
私のプレゼントからクリスマス柄の封筒に入った便箋をあさぴんが取り出して読み上げようとした。寸前のところで有馬が取り上げる。
「宮沢、読んでも良いかな?」
「もちろん。・・・・・でも、声だして読んじゃだめだよ。」
「わかってるよぉ!」
有馬が私の人生における最高傑作を読み始めた。徐々に私の意識が薄れていく。
『い、いかん・・・・睡魔が・・・・限界・・・・みたい・・・・』
本当は、有馬と二人っきりでイヴを過したかった。
でも、有馬とこれからもずっと一緒だったら、二人っきりのクリスマスイヴは何度も何度も何度も何度も何度も・・・・やってくるものね。
有馬の側にいると、安らぎが満ちてゆくの。
私が、私のままいられるから。
私たちはまだ始まったばかりだけど、これからも二人で幸せの意味を探していければいいなぁ。
有馬に会えて本当に良かった。今、とっても幸せです。
Merry Christmas To You |
私の最後の記憶は、有馬の
「メリー・クリスマス。ありがとう、宮沢。」
という声と、頬にわずかに触れられた有馬の柔らかい唇の感触だった。
『今日は良い夢が見られそうだわ。ありがとう。有馬。』
私は満たされた気持ちで深い眠りに就いていた。
Fin
あとがき
『 [カレカノ Network] 20,000 Hit 記念
』ということで琴乃さんにお送りしたカレカノ小説です。
純粋恋愛小説って・・・・・実は書いたこと無かったんですよね。(ってこれのどこが純粋なのかっ!とか突っ込まれそうだけど(^^;)
今回は雪野の視点で書いた(つもりだった)んですが、いかがなものでしょう?
有馬と雪野の直接的な会話も少ないし。
カレカノのイメージダウンになったら・・・不安だな(^^;
とにかく、苦情などありましたらメールくださいませ。
ガトー(masa-hiro.kato@nifty.ne.jp)
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