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1998年06月14日

前の日からすごく天気がよかったです。誰かに「今日は遊ばないの」って話しかけられているような。リラックスしに来たはずなのに、頭のなかはいつもあれもしなきゃこれもしなきゃと「仕事のこと」がいろいろ駆け回っていました。結局前の日まで「イルカイルカクジラクジラ」といっぱいだったのに、(いろんな人にいいまくってたのに)目覚めてからは「インスペクション(視察)」という仕事に変わってしまいました。クルーズのスタッフと話しをし、サプライヤーと話しをしていきました。前日からの雲ひとつない天気がうらめしいほどです。冬というのに「ポロシャツ」でも汗かいて歩いてました。そして、最後に観光のポイントを巡ろうかな、と思って灯台があるそこまでの海岸沿いを歩いていました。

小さな灯台からは外海の景色がすっきりと見えて、「クジラを呼ぶ魔法」でもあったら、かけたいぐらいでした。「そこでブリーチング!」なんて。島と島の間、小さな入り江から見える大きな海。ここのどこかにクジラが泳いでると思うと、気持ちがどんどん揺らぎ始めて来ました。「やっぱり海に出たい」って。でも帰りのバスまであと3時間。やることはまだまだありました。「だめだめ」とこらえようと小走りに道を降りていったとき、大きなワライカワセミの声に脅かされて、ふっと我にかえりました。

「こんなに生き物がいて、大きな自然のなかに入って、自分だけ何あくせくしてるんだろう」「しかも今日は日曜日。誰もが休みに来ているこの自然のなかで、何してんだろう。」って。

灯台の高台から急いで下って、ネルソンベイのイルカクルーズの切符売り場まで急いで進みました。ふと、湾のなかを見ると、午前のイルカクルーズが浮かんでいました。そしてその回りには、何頭ものイルカが水面から顔を出していたり、時々小さなジャンプをしていました。距離にしたら2キロ近くあります。見えるわけない距離です。でも、イルカが見えたんです。早くおいでよ、遊びに来ないの、っていわれているような気がして。そこからは、同じ道を半分の時間で戻っていました。

昼からの1時間半のクルーズでは「どれだけ見れるかな」と半信半疑でした。ところが、最初は1頭かそこいらの数でしたが、何と20頭ものイルカに会えました。クルーズの間、1時間以上は会えました。前の日からの大雨で、海が濁っていたのですが、近くに来たときは、確かに分かりました。始めのうちは写真を撮っていたのですが、そのうち、ファインダーじゃなくて自分の目でちゃんと見たい、と思い、カメラをしまってじっと眺めてました。自分でも自分が笑っているのが分かりました。 「やっぱり来てよかった」休みが本当に必要だったんでしょうか。

あっという間の時間でした。そして、心のなかで「またね」っていったんです。そうしたら、1頭のイルカが首から上を海より上に出してしばらくこっちを見ていたんです。飛んだんでもなく、息しているのでもなく、まるで立って眺めるように。自分でも信じられないですが、本当に見つめあっているように。ちょうど、去る人と見送る人のような光景でした。水族館のイルカじゃなくて、野性のイルカがそんなことするなんて、、、このとき、本当に話しできたら、どんなすばらしいことかと思いました。

私たちは同じ哺乳類です。私たちは地上で生活をして、彼らは水中で生活をして。同じような大きさの脳を持っている。その2つを分かつものは水面。彼らのうちでその海面を分けて近づいてきてくれました。今度は、私が海のなかへ近づく番?

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