転職失敗記その4

転職サイトの実際

自分のプロフィールやスキルを簡単に登録できて、仕事の検索もできる。そういう、転職サイトって、 いまは本当に腐る程ある。
こういうところのうたい文句は、「インターネットで簡単に全国の仕事を探して転職ができる」だ。

学校に通っている頃、私も気になって、 就職関係で名の売れているM社のサイトに、登録してみることにした。
数日後、郵送でさらに詳細なことを記入するシートなどが届いて、中に入っていた 手紙には
「一度弊社担当者とさらに詳細な打ち合わせを行うために、 御来社いただきたいと存じます」
と書いてあった。 んなこといわれたって、こっちはZ市なんだけど…。
しばらくして、担当のOさんという方からメールが来た。
「御登録ありがとうございます…当社では転職を希望されるかたがたの…」
と、とおり一遍の説明が書いてあって、
Web上で紹介している他にも、弊社に来ていただいたかたのみ、公開している 情報もあります。つきましては一度弊社にいらして下さい」
と、同じことが書いてあった。
どうせ学校に通いに東京行ってるんだし、授業のある日に早めに出て、いってみよう。

というわけで、官庁街にあるM社に行ってみた。
担当のOさんはいかにもキャリアウーマンといった感じの女性。彼女は最後まで笑顔をみせなかった。
「Z市でSEを辞めてデザインね…うーん、Z市の求人はほとんどこないんですよー。 地元の情報誌とかのほうがいいんじゃないですかー」
…全国から求人が集まってるはずじゃなかったのか。
さらにOさんはだるそうに続ける。
「それに、インターネット関係のデザインは、もう下火なんです。いろいろソフトが出ているでしょ。 東京でさえそれだから、Z市はねぇ」
「で、でも、あの、いまA校に通って勉強しているんですけど」
「大変ねぇ。前にもいたんですよー。A校に行ってて転職したいっていう人。けっきょく駄目だったみたい だけどね、その人」
そこで私は、以前インターネットで探してみた話をした。
「ええっ!あるのぉ?Z市で…?」
と馬鹿にしたような口ぶり。
「そのうちE社に連絡してみたんですけど、結局お断りしたんです」
おねえさん、いや、Oさんは目を釣り上げて私を睨み、
「なんで受けなかったの」
とドスの聞いた声をだした。 私が理由を説明すると、ふたたびOさんはだるそうに、
「…そう…○○さん(私)ももう27でしょ?ぎりぎり転職できるボーダーラインなんですよ。 どうしても、いままでの経験をいかすんじゃなく、CGの仕事がしたいっていうんなら、 地元の就職情報誌とかで探した方がいいんじゃないですか」
そんなわけで、就職相談は終わった。
「お役にたてなくてすみませんでしたー」
とOさん。
「いえ、とんでもないです。がんばらなきゃな、っていうやる気がでました」
「そうですかぁ」
Oさんはまた馬鹿にしたような目をした。

「遠いところわざわざすみませんでしたー」
と、全然すまなさそうな 口調でないOさんに送られ、私はM社を後にした。
「がんばらなきゃ、っていうやる気が出た」のはある意味本当だった。 すくなくとも、Z市で転職しようとするやつは、あんなふうに 小馬鹿にされてもしかたがないんだな。 そのぶん、がんばらなきゃ。 私はまだ、なんとかなると思っていた。

転職サイトに登録しても、東京の人以外、ほとんど意味がないのだと思った。

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