転職失敗記その7

初めての面接

ある日会社が終わった後、自分の作品を抱え、G社の面接へ向かった。
私はG社にはあまり興味をひかれていなかった。 映像制作のみで、マルチメディア関係、つまり自分の得意な Directorやホームページ関係はやっていなかったからだ。
でもCG制作はやっている。贅沢は言っていられない。

こじんまりとしたオフィスは、A校で感じていたCG会社のイメージと ちょっと違っていた。が、ここは東京ではなくZ市、こんなものなのだろう。

緊張して待っていると、H専務が現れた。 けっこう若い人だった。
会社案内パンフレットを片手に会社概要を説明していただいたが、 「あれ?なんかちがう…」と思いはじめた。 なにがちがうって、どうも面接じゃないみたいなのだ。
ご存知とはおもいますがタイタニックにも使用されたソフトで…で ございます」という感じの口調なのだ。
なんだか私が会社見学にきた人のような。
作業をしている部屋も見せていただいたが、その時も、 「これが、ご存知とは思いますがシリコングラフィックスの○○でございます」 という調子。 ご存知とは、って、私はMac用のCGコースを受講しただけで、 こんな赤や緑のマシンはご存じないのですが。
面接に来た人間なのに、なんで こんな丁寧な口調で応対されるんだろう?
もしかして、私の反応を試されていたのかもしれない。とは、 後になって思ったことだったが…

でも一応、そのとき私は初めてCG制作の現場を見せていただいたので、 面白くていろいろと質問した記憶がある。G社で制作したCGのビデオも 見て、非常に興味をそそられた。
また、やはりインターネット関係が整備されているか どうか気になったが、どうもその環境はないようだった。

ひととおり会社の説明をしていただいた後、 H専務は
「現在うちではCGデザイナーの求人はしておりません。 編集の助手は探しているんですが」
と、ようやく肝心な話を出した。 なんだ。 結局、CGの求人はないということなのだ。
がっかりした。私は編集の仕事には興味はない。

せっかく持ってきた履歴書も作品も、それについて言及されることは 一度もなかった。 A校での就職セミナーの面接対策も、一切生かせなかった。
「でも一応、取引のある外注などに求人がないかどうか聞いてみましょう」 とH専務。履歴書と作品は預かっていただくことになった。
なんとなく、雰囲気で、駄目だな、と思った。
私は落ち込んでG社を後にした。 これじゃ、面接ではなくて、ただの会社見学じゃないか!!

後日、H専務から電話があった。
「その後ですね。ほかの会社にも一応聞いてみたのですがね。 どこの会社も、このようなご時世ですから、なんといいますか、 まったく聞く耳を持たないといった感じです。ですから大変 申し訳ないのですが…」
そして、G社からは不採用通知と履歴書と作品が送られてきた。

前へ indexへ 次へ