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【第一話】開発第一の関門
社長用バージョン
表があれば裏がある…なあ〜んて、そんな話
キビシイものです会社とは…
ゲームのメーカーといえども、会社というものはやはり
会社なのである。(ウン?意味は…読者諸君、甘い考え
は捨てるべきだ!)
というわけで、これはあるメーカーの開発部の某氏に聞いた話。
「俺もね、ゲームを作る時に考える対象はゲームセンター
で、ゲームをしているみんななんだよね。それが実際にメ
ーカーに入って開発の仕事をするようになるとさ、社内の
人間や関係者という限定された特殊な人達にうける、とい
うことを考えなければならないんだよね。なぜって、まず
そうでないとゲームセンターにゲームが出ないんだから」
さて彼は自分の作ったゲームが、プレイヤーに受け入れ
られないことを心配していたが、彼の突き当った壁は実は
社内にあったのだ。それも厚い壁。
「決局のと二ろ一番まいったのは社長だね。今回のゲーム
もほぼ完成、というところで突然『私の所に持って来なさ
い』ときたんだ。何かと思ってたら『発表の前に私がやっ
てみる』だそうだ。他の人に聞いてみると、社長はいつも
そうするんだそうだ。それは悪いことじやないし、むしろ
良い事だと思うけどさ、困るのはその後なんだよね。
実はさ、社長はゲーム、下手くそなんだよね。ものすご
く。今回のゲームは割と簡単なゲームでね(実際現在では
簡単すぎたゲームと言われている)、長く続きすぎるかな、
と思っていたくらいなのに、それでもだめだった。
なにせ、レパーを右へ倒しつづけ、ボタンを押しまくる
方がまだ上手い、というくらい。で、まずいことには、こ
のゲームはあまりに早く終ると、ちょっとプレイヤーをか
らかうデモがあるんだけど、それが社長のカンにさわった
らしくてね。
もちろん、ちょっと上手くなれば、そんなことはなくな
るんだけど、社長のやった範囲じゃあ、まだまだでね。決
局『このまま発表はまかりならん』てなことになっちゃっ
たんだよね。これにはまいったよ」
お気にめしましたか社長用バージョン
さて、彼の他の開発者はどうやって社長をクリアしてい
たかというと、実は社長がやるために特別に簡単にした、
社長用バージョンを用意していたのである。
「で、どうしたかっていうとその後で特別に簡単にした、
いわゆる"社長用バージョン"を作って持って行き、それで
OKを取って、以前作ったやつにほんの少し手を加えて発
表したんだよね。結局うちの会社では、プレイヤーよりも
先に、まず社長を納得させるようにゲームを作らなきゃな
らなかったってわけ」
さて今回のお話はここまでですが、みなさんはどう思わ
れますか?
この記事は事実に基づいたフィクションであり、実在の
団体、その他とは関係がないということにしておいて下さ
い。