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【第五話】暑いねー 時期が時期だから
開発怪談バナシといこーか
――ホントと思ってもウソと思ってもいいけど……
「ぼく、将来ゲームの会社で開発やりたいんです」などと
言う人も多い(本当か?)という、今日このごろ。ちょっ
とこの人の話、聞いてみて下さい。この人っていうのは、
あるTV番組のために、ゲームメーカーに取材に行った人
なのだよ。
「いやあ、あれはもうずいぷん昔の話だから、いくらなん
でも今はそんなことはないと思いますよ。ええ、あれはイ
ン○ーダーが出てゲーム業界がめちゃくちゃに盛り上がっ
たころだから。でも本質は変ってないってことも考えられ
ますね」
この人は、そのころのTVゲームブームに乗った番組を
作るために、あるメーカーの開発部に直撃インタビューっ
て感じで取材に行ったんだそうだ。
「そう言えば、あの会社も当時にくらべると今や大会社で
すよね。あのころはまだまだ初期の段階だったんですよね。
まあ、いざ取材という段になりまして、まずは会社の方
からの案内役みたいな人に紹介されて、その人と今やゲー
ムはどうこう、とかこれからゲームっていうのは、とか話
を聞いて、ではそろそろ実際にゲームを作ってる現場に行
ってみましょうかっていうことになったわけです」
さて、いよいよ開発現場に乗り込むことになりました。
はたして、この人がここで何を見たのか! 来号をお読み
…じゃなかった、続きをお読み下さい。
のぞき穴に錠前とくれば…
「こちらです、と通された所はコンピューターとモニター
の並ぷ楽しそうな所…かと思いきや、何んとそこには頑丈
そうな扉があるんですよ。扉の目の高さくらいの所には縦
5センチ横30センチくらいのフタのついたのぞき穴のよう
なものがあいていて、取っ手のところには、これまたしっ
かりとした錠がついていて、そんな扉がいくつも並んでる
んです。
案内役の人がノックすると、内から『まだ』とぼそっと言
う声が聞こえました。再度ノックすると一寸して、例のの
ぞき穴が開いて、『なに?』と尋ねる声。しばらく話して
いた後、案内役の人が『どうぞ』ってその扉を開けてくれ
たんだけれど、その時にわざわざ鍵を使ったんだ。
で、何で錠をおろしておくんですかって尋ねたら、『その
方が開発の人間は落ちつくんですよ』って言われたんだけ
ど、何となく異様なものを感じますよね。
これは後で聞いたんですが、実はこの錠は中の人間がノル
マを終えて、例ののぞき穴から基板を差し出すと、開けら
れるんだそうですよ」(なんちゅー恐ろしい職場なんだ)
思わずゾッ
その部屋に入ってみると、暗いんですよ。それで角の方
にモ二ターとキーボードや何かがあって、そこに人が座っ
ていて何かやっているんです。いよいよゲーム作りの現場な
んだな、と思って気を取り直して後ろから見てたんですけ
どね。まずモニタ−を見ながらゲームをやってるんですよ。
それが何故か解りませんけど音が舞いんです。
で、その開発の人が何かぶつぶつ言ってるのが聞こえて、
何を言ってるんだろうと思ったら、自分のやっているゲー
ムに合わせてズガーン≠ニかビューン≠ニか擬音をしゃ
べってるんですよ。それを聞いて思わずゾッとしちゃいま
したよ。暗い部屋でそんなことやってるの相像してみて下
さいよ、解るでしよう。
モニタ−を見ていたら、自機らしいのが何も無い所で突
然爆発しちゃったんです。そうしたら、その開発の人は茫
然としちゃって5分くらいそのままぼーっとしてるんです
よ。すると今度は、突然キーボードに向ってカチャカチャと
プログラムをしているんです。私には、でたらめにやってる
としか思えない速度で。
そんなことを何度かくり返した後で、その人は基板を持
って扉の方へ行って基板をのぞき穴から差し出すと、扉の
カギがガチャリと開いて出て行きました。
私も追っかけて部屋を出ると、誰かが、この開発の人に、
『じやあ今度はここだ』って言って、他の部屋に入れて、
また錠をおろしたんです。
まあ取材はそれで終ったわけですけど、結局その番組の
企画は流れちゃって番組になならなかったんです。まあ理
由は想像の通りですよ。本当は、子供に大人気のTVゲー
ム製作現場! という番組が予定だったんですから。
むむむ…そんなふうにして作り出されていたゲームもあ
ったのか。なんか暑い日の怪談話みたいになっちゃったじ
ゃないか。えー今回の話はこのへんでやめときましょう。
さて、この頁ではみなさんのお便りを(実名)で募集し
て...それから本文はフィクションということになって
いることをお忘れなく!