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【第2話】ライター残酷話
プレイヤーの価値はゼロなの?
2日間働いて、おもちゃ1個の報酬
はたで思うほど良いものじゃないのだ
ゲーム雑誌に記事を書いてるっていうと、何かうらやま
しいと思う人もいるかもしれないけれど、実状は……なの
である。
というわけで、これはあるゲーム雑誌のライターに聞い
た話である。
「だいたい、あそこ(某会社のことである)は人をなんだと
思ってるんだろうね。俺は仕事だっていうから行ったんだ
よ。そりゃあゲームが好きだからこんな仕事をやってるん
だけどさ。だからって、あの態度はちょっと人をなめてる
よなー」
彼が何を怒ってるかって?まあ彼の話を聞いてみてよ。
彼はその日、雑誌社に紹介されて、あるゲームメーカーに
呼ばれたんだ。何故呼ばれたかというと、そのメーカーで
は今度ゲームのビデオを作るので、その撮影のために腕の
良いプレイヤーが必要だ、というので彼が呼ばれたのだ。
「最初は簡単な仕事だと思ったんだ。何たって、俺はゲー
ムをプレイするだけだと思ってたんだからね。そういう話
だったし。で、いざ始めてみると、実はたいへんな仕事だ
ったんだよ、これが! なぜって、ただゲームをすれば艮
いのかと思いきや、さにあらず。注文が多いんだよ。
例えば弾を撃たないで、とか紙一重で弾をよけて、とか
剣を出さないでやって、とかね。けっこうきつい注文を気
楽に出してくれるんだ。まあ、面白いビデオをとるためだか
ら仕方ないけどね。
でもね、何が難しいって、実は撮影のためにモ二ター画
面が横向きだったり、逆向きだったりするんだよね。これ
なんかは、モニターをもう一つつないでくれればいいのに
ね。そのあたりが、なんとなくお手軽にすませている感じ
がするよなー。
それに、初めはすぐ終るみたいな様子で呼ばれて行った
んだけど、実は丸2日めいっぱい、それも夜10時までかか
ったんだよ。何だかんだいってとっても疲れた2日間だっ
たよ」
え? 何も怒ることはないって? いやいやあせらない
で。彼が怒っているのはこの後のことなんだ。
え? バイト料が…
彼はこの日、アルバイトということで呼ばれて行ったん
だ。だから当然アルバイト料が出るはずだと思ったんだけ
ど…。
「何だかんだで一応撮影は終ったんだ。それでまあ、その
日はそのまま帰ったんだけど、その時今のバイト料はどうな
るんだろうって何となく心配したんだ。せこいなんて言わ
ないでよ、学生が遊びで呼ばれたんじゃなくて、一応社会
人が仕事で行ったんだから。
そしたら案の定、しばらく待ってもバイト料に関して何
の音沙汰もないんだ。2日間それも夜10時まで仕事してバ
イト料なしっていうのはまいっちゃうからさ、出版社の方
からちょっと尋ねてもらったんだ。そうしたら近いうちに
ってことになったんだけど、どうもその時の様子じゃあバ
イト料のことなんて考えてなかったみたいなんだ。
それでしばらくしたら、俺あてに何か送られてきたんだ。
それが何かの箱なんだ。何で箱なんだろうと思って開けて
みたら中身はそのメーカーで作ってる、おもちゃだったん
だ。1個だぜ。
で、これがバイト料だってわけ。ちょっとさー、俺はそ
の会社のファンで呼ばれて行った子供じゃあないんだよ。
それを、この扱いはちょっと人をなめてると思わない?
それに、そのおもちゃはスーパーで売られていて、チラ
シには1個1980円、おなじみのイッキュパの値段なん
だよ。これで丸2日間、夜10時までの報酬なんだからね。
交通贅も一円もでなかったし…。
あの会社はちょっと子供に人気があると思って(かどう
かは知らないけど)態度が横柄だと思うよ、俺は。あの会
社は他にもそういう面があるよ、実際」
というわけで、彼の2日間のバイト料はおもちゃに化け
てしまったので、彼は怒っているというわけである。
さて今回の話はここまでです。えーとそれから本文は一 応フィクションなので、実在の団体、事件などとはたてま えの上、無関係ということになってます。