原核生物と真核生物
(prokaryotes & eukaryotes)
生きものは、細胞という小さな部屋が集まってできています。人間やクローバーなど私たちのまわりにいるほとんどの生きものの細胞は、その中に膜でさらに細かい仕切りをつくり、細胞の中を整理整頓しています。細胞の中に、うすい膜で囲まれた場所があって、それぞれの場所がさまざまな働きをしているのです。そのような仕切りを、「細胞小器官(オルガネラ)」といいます。オルガネラの中には、遺伝情報をもった核酸をとじこめた核(かく)や、細胞の中でさまざまな物質の輸送を行う小胞体(しょうほうたい)、生命の活動に必要なエネルギーを供給するミトコンドリアなどがあります。細胞の中にこうした仕切りを持つ生きものを「真核生物(しんかくせいぶつ)」といいます。
しかし、生きものの中には細胞の中にそうした細かな仕切りをもたず、ごちゃごちゃになったまま生きているものもいます。そうした生きものには、バクテリアやラン藻とよばれるものがあります。部屋の中を整理するのが好きな人もいれば、べつにごちゃごちゃしていても気にならない人もいますね。バクテリアやラン藻は、ごちゃごちゃしていても平気な人のようなものです。そして、地球にはじめてうまれた生命も、やはり最初は、ごちゃごちゃのままで生きていたと考えられています。このように、細胞の中を整理せずに生きている生きものを、「原核生物(げんかくせいぶつ)」といいます。
原核生物は私たちを含めた真核生物には分解したり合成したりできないような、さまざまな物質を代謝することができます。また、増えるのもはやく大腸菌などは調子がいいと20分から30分で倍になってしまいます。原核生物は機動力で勝負しているのです。逆に真核生物は、おおきな体をもち、抵抗力をつけて身を守りながら、長く生きることを目指したのかもしれません。
生きものは長い時間をかけて、細胞の中の整理整頓の方法を考え出してきました。原核生物はそうした整理整頓の方法を知らないので、「原始的でレベルの低い生きものだ」という人もいます。でも、かれらがきびしい競争に生きぬいて、今でもちゃんと生きていることに変わりはありません。