核酸(nucleic acid)
もともと核酸ということばは、細胞の核の中にある、酸性の物質という意味でした。しかしあとになって、それが遺伝子を記録したカセットテープのような働きをしていることが分かりました。
核酸をつくるときにはまず、リン酸と糖が順序良く並びくさりを作ります。そして1個おきにならんだ糖に塩基がくっついています。その中のリン酸の部分が、酸性の原因となっています。 そして、長いひものようになった2本の分子がからみあって、らせんを作っています(左上の写真:立体視ができます)。
核酸には、記録と複製(ふくせい:コピーすること)をおこなうDNAという物質と、記録された情報をつかって、生物の体を作りだすときにはたらくRNAという物質の2種類があります。DNAとRNAは、中にある糖(とう)という部分がちがいます。この違いによってDNAとRNA少しだけ性質が変わっています。DNAは安定で保存に向いていますが、RNAは不安定でもいろいろな反応を行うことができるのが特徴です。RNAがいろいろな反応を引き起こすことができるので、生命はRNAから始まったのだろうという人もいます(→生命の起源)。
生きものが生きていく上で、タンパク質はとても重要な役割をはたしています。タンパク質は、アミノ酸と呼ばれる小さな分子がつぎつぎにつながってでき上がります。つながるアミノ酸の種類がかわれば、タンパク質の働きも変わってきます。そのアミノ酸の順番を記録してあるのが、核酸です。核酸は、4種類の塩基(えんき)とよばれる物質がならび、その間をリン酸と糖がつないででき上がっています。核酸では塩基が3つならび、そのならび方でタンパク質のアミノ酸を一つ指定しています。3つずつつぎからつぎへと塩基をよんでいくことで、タンパク質のアミノ酸配列を決めているのです。つまり、塩基のならび方をアミノ酸のならび方に「翻訳(ほんやく)」することができるのです。
細胞は、タンパク質の助けを借りて、核でDNAの情報をRNAに写し取ります。できあがったRNAは、核の外にあるリボソームという場所に運ばれ、タンパク質に翻訳されます。