膜電位の形成



 胞膜は電気をおびたイオンなどの粒子を通さないという性質があります。膜に浮かんでいるあるタンパク質は、ナトリウムイオンを3つ細胞の外に出し、カリウムイオンを2つ細胞の中に入れることができます。エネルギー源にはアデノシン3リン酸を使っています。ナトリウムイオンもカリウムイオンも同じ大きさのプラスの電気をおびていますから、このタンパク質が一回はたらくごとに、プラスの電気が一つ分、細胞の外に放出されることになります。ナトリウムイオンは細胞の外に多く、カリウムイオンは細胞の外に多くなります。

 胞を構成する分子には、核酸や脂肪、タンパク質など電子をあまりほしくないものがたくさんあり(→酸化還元反応)、どちらかというと電子が余っています。細胞膜の上にある、また別のタンパク質は、カリウムイオンをゆっくりとですが自由に通してしまいます。電子はマイナスの電気をおびていますから、プラスの電気をおびたカリウムイオンは、このタンパク質の中を通って細胞の中に入ろうとします。細胞膜の外にはナトリウムイオン、内がわにはカリウムイオンがあって、電気的に釣り合っているのです。

 かし、カリウムイオンは細胞の中にある核酸や脂肪などの分子に引っ張られています。このため細胞膜の近くでは、外がわのナトリウムイオンにくらべて、内がわのカリウムイオンのほうが少なくなっているのです。どちらも同じ大きさのプラスの電気を持っていますから、細胞膜の外がわにプラスのイオンがたまることになります。この仕組みによって、細胞膜の外がわにはプラスの電気がたまり、内がわにマイナスの電気がたまっています。

 う少し簡単に言うと、細胞膜の内がわと外がわに電気がたまる大きな原因は、細胞の中に「マイナスの電気をおびた電子を、あまりほしくない分子」がたくさんあることです。このためプラスの電気をおびたイオンが細胞の内がわにひっぱられます。結果的に細胞の近くでは、内がわと外がわでプラスのイオンの濃度がちがってしまうのです。