ミトコンドリア(mitochondria)
ミトコンドリアは二重のうすい膜で囲まれていて、細胞の中に浮いています。ミトコンドリアは、有機物から酸素へと電子を渡すことで強い電子の流れを作りだし、アデノシン3リン酸とよばれる細胞のエネルギー源を合成します。
電子は3つのタンパク複合体(いくつかのタンパク質がくっついたもの)を通って最後に酸素にわたされます。このとき、それぞれのタンパク複合体を電子が通るごとに、そのタンパク複合体の中を通って、陽子が一つミトコンドリアの外に吐き出されます。つまり、ミトコンドリアの外は陽子がたくさんあるのに、中にある陽子は少なくなります。これはちょうど、ダムに水がたまったようなもので、陽子はミトコンドリアの中に流れ込もうとします。ミトコンドリアの膜に埋まっているタンパク質は、この力を利用して陽子を中に通し、アデノシン2リン酸(→アデノシン3リン酸)とリン酸イオンから、アデノシン3リン酸を合成します。でも、このタンパク質がどのようなしくみによって、アデノシン2リン酸とリン酸イオンから、アデノシン3リン酸を合成するのかは、まだよく分かっていません。
ミトコンドリアは自分の遺伝子を持っています。ミトコンドリア自身が使うタンパク質のアミノ酸配列を記録した核酸が、ミトコンドリアの中にあるのです。そして、核酸からアミノ酸の配列を読み取り、タンパク質を作りだす仕組みが、ミトコンドリアの中にもあります。植物の緑色のもと、光合成をする場所である葉緑体(ようりょくたい)も、自分自身の遺伝子を持っています。しかし、細胞の中に、核とミトコンドリア、葉緑体のほかに遺伝子を持っているものはありません。このため、ミトコンドリアはもともと一人で生きていた生きもので、あとからほかの生きものの中に入りこみ、いっしょに生活するようになったのだと考える人もいます(→細胞内共生説)。
写真提供:Dr. Thomas Caceci
http://www.vetmed.vt.edu/Teaching/courses/Freshman/VM8054/